コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって7-7

 いつもながらに目ざとく私の神経を逆なでする奴つだ。いいか、抑える、抑えろ。吐き出してはならない。冷静になれよ。種田は言い聞かせる。部外者のあいつに話を聞く、この行動すらも私は考えられないほど、そう蕁麻疹が出てもおかしくはない忌み嫌う最悪の問いかけなのだ。まったく。自分を呪うぞ。上司との関係も詮索の対象に置かれている、あるまじき行為。これは単なるあこがれ、立場への羨望、アドレーションに過ぎない。捜査権限が拡充された上司にいつかなりたいのさ、種田は余分に言い聞かせた。それにだ。結局は事件の解決が優先されるべきだ。私は二の次に回すべきである、警察としての職務が何よりも、生活や思想の侵害にかけても、一番に掲げるのさ。

 洋食店の店主の発言を種田は読み上げる。視界の右隅から視線を感じる、医者がものめずらしく見つめているのだろう。取り合わずに続けた。そればかりでなく、市民に扮して通信端末会社の訪問と飛行船の事務所付近のボヤ騒ぎを言い添える。

「ふふふっ、ははっ」短い笑い声が聞こえた、脳内に記憶した文字を読み上げた直後であった。種田は言う。

「お話を窺いましょう」たっぷり間を取って種田は再度、質問を投げかけた。スピーカーのノイズに話し声が背後に流れる。かなりの人ごみらしい。

「復唱はいたしませんので、予めご了承くださいね」咳払い。日井田美弥都は堰を切ったように言葉をつむいだ。