コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって7-10

「男女の関係に年齢など無関係。女性が上の年齢であるならば、世間で散見されるのは一部でしょう。だから、どうこうということではありません、データが少ない、または表層に見られる場面が少ないかもしれないだけ、ということもたぶんにありえます」

「……フォローですか?残念、ながら、そんなロマンチックな関係じゃ、ないですから」

 種田は病室を出た。

 彼女の発言は嘘には思えない。丁寧に緊急時だから取り繕う心理が働いたとも思えたが、縛りつけ、自分を煙にまみれに、命すら奪いかねない状況に陥れた非常事態と飛田への思慕を天秤に掛けられるものだろうか。

 雨、しゃわしゃわと囁くような霧雨。喫煙席に医者の姿はない。ロータリー、滑り止めの窪んだ真円に水玉のシミを作られる。風。そよいで髪をさらう。

 そろそろ切ろうか。こうして私は髪の切り時を認識するのだ。

 事件、そう事件を刹那、忘れてしまえる能力、私の機能。劣った機能だ、基準値から優越であるがゆえにしれてしまう、それ以上の高機能と高性能。あの女との多大な開き、だけど、悲観はここまで。持ち越す必要は求められてないんだ。

 歩き出す。雨の中。交通係を通り過ぎ、水が溜まる白線を踏みつけた。渡る者と止まる者との共有物。

 盛んに人が建物に駆け込む。傘を差してるものは優雅にさえ見えた。

 ここはどこだ、現在地はわからない。最寄り駅を探す。そうだ端末。電源を入れた、向かいの建物に到着する。雨宿り。鈴木から連絡が入っていた、伝言が残るアイコン。こちらを見つめる交通係と視線の交錯、私からではなく、むやみにむけた相手にその離脱を願った。

「もしもし、種田です。はい、立て込んでいたもので。病院です、私は無傷です。はい、ではそこで合流を。のちほど」