コンテナガレージ

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エピローグ1-2

 断固反対。誰が書いてる、歌っている。私が発した言葉に力を持たせるには、私の意識が通ってなければ、届きはしない。

 天命を待つ。

 それじゃあ、締め切りに間に合わない。

 ……自分が特別な思想を持っていると、勘違いしてないか?

 受け入れられたのは確かに人の共感を得られたからだけど、でも特殊な、これまではないタイプの曲であると感じ取ったはずだ。

 もともとあなたはどこからきたの?全体の一部だったのよ。現在はかなり偏った異質な立場。私の曲が新しさを彼らが見出すのではなくって、彼らのなかに私を見つけ出すの。難しかったかしら。

 つまり、考えすぎていたんだ。ふうん。シンプルな形に舞い戻った、そういうことか。

 おそらくは。

 含みを持たせても、何も隠していない。わかっているんだ。

 元に返るの。スタンダードは極限だから。

 それって取り組んでる曲のヒント?

 時間に合わせて生きている。それだけで平等。

 赤い日が空を染める。水平に近い入射角によって光の反射が吸収され、残った赤。元は一緒。同じ光。

 本質に立ち返る。還元しなくては、私が生きてこられたのは彼らのおかげ。根元を辿って掘り返す、でもスコップで折らないように、そっとやさしく途中まではザックザック勢い良く、そして核心に迫ってからはほぐすように土を払うんだ。

 微かな手がかりが消えないように、すぐに取り掛かることはしない。時間おいて寝かせて、味をしみこませ、取り出す。そこでひらめきと同等の感度であれば、創作に取り掛かり、思い出せない部分や曖昧な箇所はきっぱりそぎ落として別れを告げる。

 エアコンの電源を入れた。窓を閉める。鳥が鳴いていた。姿は見えない。㍶の電源を落として、上着は羽織ったまま。コーヒーを飲み干して、綺麗に洗い、水切り籠に立てかける。温まり始めた部屋に別れを告げた。

 地上に降り立って鳥を探したが、どこにも姿はなかった。