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犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 3 ~ミステリー小説~


 息遣いがそっくり跳ね返る歩道に二度目の気配を感じ一人であることをあきらめて認めろ、説得と教示をかき混ぜた町の息吹がビルの窓、建物のドアが吹きかけ押し出すかのようで、都内の春はひどく生暖かい。
 指定された住所に到着し階段を上る。何者に反応したのか、左のエントランスに迎え入れる自動ドアが一度開いた。深い青のタイルが特徴的なビルの外壁、比べて細い階段は侵入者を拒む深い緑を湛える。救いはすれ違いに接する迫る壁、天井に従うグラデーションの演出、明るさという錯覚を上部に見止める。印象とは恐ろしい。
 室内に入る、一応ノックはした。無反応がデフォルトの落ち合う人物たちだったのだ、思い出した、出くわしたここまでの光景にすっかり気を当てられたらしい。
 残りの空席に着く。テーブルとそれを取り囲む四脚の椅子がカウンターキッチンに寄った室内は妙にアンバランスだ。真後ろのブラインドは閉まり、天井は低い。
「昔話に興じるつもり、ないのですけれど」女性が冷酷に意見を述べた。左側の席。
「前提、前置きが後述の展開に欠かせない。焦りは禁物ですぞ」正面の髭を蓄えた男性、老人が目じりの皺を深く刻んだ。手元にパイプ。においは感じていたが正体を突き止めるまでには至らず、……嗅覚は花粉にやられたとみえる。
「死に体、大量に舞い込んだ案件の処理は画期的なシステムがその実現を可能としました」髭の男性は胸郭を広げた音声を放つ、主にこちらへ。右側の男性は生きてるのか死んでいるのか、かすかに呼吸音は聞こえた。「我々は死を請け負ったのです」補足をすると、ここに集まる面々は現在日本、いや世界の四代死生勢力と呼ばれる機関の代理を務める、死を生業とするビジネスにいち早く管理システムの構築と莫大な資本を投じたのだ。
「初対面ですけれど、口は糸で結んでしまったのかしら?」女性が屍のように動かない男性を煽る。
「必要性を感じたら、望みの回答を届ける」
「誰かさんにそっくり。男性版だと嫌味がいっそう増す」
「新人さんにはお手柔らかに願います、さあて、皆さん、よろしいかな?」
「それで?」女性は返答を流し、展開を促す。
「我々に富が集まる。国内外の依頼に誠実さをもって応えたてきた。死の実現によって得られた報酬の十パーセントが還元、少々の誤差は目をつぶりました、現在では厳しく追及しますでしょうかな。そして国際的な高い地位に就いた。大国並みに膨らむ資本の著しい肥大化は備わった固有の気質を引き合い論じられる。しかし、これはあくまで要因のひとつでしかない」
「長いわね。タバコ吸いますよ」女性は断りを入れた。灰皿が姿を現す、髭の男性はテーブルの下から取り出した。どうやらこれは机らしい、照度が邪魔をしてテーブルだと思い込む、いやどちらでも椅子と机との隔たった誤認を思えば、取るに足らない錯覚で済む。取り合うな、とそっと肩を叩いてやる、過敏な神経は表の通りのせいにしてしまえ。