コンテナガレージ

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論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 3~無料で読める投稿小説~

「皆さんはその方を見ましたか、会って話をしたのでしょうか?」
「あっと、そう、ですよね。居眠りはアイラさんの前提でした」大げさ、カワニの動作は余計な労力そのもの。もっと効率的な動きなら、数時間の余力を一日に残せる。
「侵入者はあなた方による監視が入出の難易度を高める」アイラは仮の世界を広げる。「もうひとつ揺るがない規定を提案します」
 カワニは納得しかねた表情、思い込みを理解を人は履き違える。彼女とは無縁、遠距離に位置する概念だろう。すんなり新しい考えを彼女は招き入れる、躊躇はなく、未練や後悔などはもってのほか。信心めいた伝承であろうと、不安定な確かさにはきっぱりと道端に大切に崇め奉る人々の前であっても捨てられる強さを備える。このとき彼女は事件を引き起こす人物の心情について初めて寄り添ってみる気持ちに駆られた。なぜそうしたのか、普段ならば結果を導く単なる過程である。気分がいいから、それだけとは思えない。空腹が気分の高揚を誘うのは、消化物と排泄のエネルギー消費から逃れた僅かな時間である。動かないことが条件に付帯し、活動は頭脳労働が主流になる。最もよい時を曲作りにあてがうべきではないのか、という疑問に対しては、「曲はお客に向かう」。こちらの理解を多少なりとも劣化させた程度を彼らは好み、それがベストであると観測データがはじき出すのだ。個人的に立てた見識とは異なる。タバコが吸いたい。しかし、我慢をすることにした。あえて不可抗力を導き入れる、これは見事な仕事の反発力となりえる、と近頃考え始めた彼女の取り組みなのである。アイラはいった。
「アメリカ当局はその目で捉えた現象、現物をありのまま報告した。嘘偽りなく、という規定です」
「そうなんですよね。当局が何もかもひっくり返しちゃう、これは密室としてはかなり卑怯ですかね、うんうん」
 密室。
 考えもしなかった。そうか、刑事たちもカーテン一枚を施錠された鋼鉄製の扉だと捉えていたとは、アイラは思わず笑みを浮かべた。
「笑いごとじゃありませんよ。なんでもありなら、僕らが長時間聴取を日本側で受けたことはおかしいですからね」カワニはそこで、忘れていた、と差し入れをテーブルに並べ始めた。銀行鞄に詰め込まれていた、ひしゃげた箱が物語る。いや、もともとつぶれたので私への差し入れに選んだのかも、事務所には訪問客が耐えないという。アイラとの仕事を持ちかけるクライアントたちがこぞって供物を運び込む、その処理は迷惑の域を超えているのだそうだ。こちらへもその余波が押し寄せる、スタジオの冷蔵庫にはぎっしり何かしらの丸い甘い商品がひしめく。ただし、アイラは甘いものを苦手とする。カワニはクッキーを持ち込んだ、これならば、という想定なのだろう。
 最低限の活動を維持するための数枚をアイラはすかさず摘んでみせた。もちろん、喜ぶ顔でもそれは配慮ということではないのだった。
「二つの規定に従うとしてですよ」カワニはゴマをまぶす、いや生地に練り込み焼き上げたスティック上のお菓子をつまみ上げて、続きを話す。「うーん、そうですね死体を作り出した人物とです、手をかけた人は同一人物だったのかを知りたいですね。もう一人秘密を抱える人がいるのは僕だと気が気じゃありませんもん」満足げにカワニが意見をぶつけた、仕事の合間、かまけて考えを這わせたのだろう。
「作り出した、というのは殺害か。犯行を露見させた意識的あるいは無意識の行動をも含むかでも、後述に繋がる推測は大幅に異なる」
「一切合切を一人でやり遂げてしまったわけでもないのか、そうか、そうか」神妙にスティック状のお菓子を彼は食べ進める。「そぅだ、忘れて帰ってしまうとこでしたよ。うかっりしてました」