コンテナガレージ

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論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

「フライト当日、六十番ゲートに着いた最終便の到着時刻は?」アイラは尋ねた。
「二十時半」
「私たちの搭乗は二十ニ時半。約ニ時間、ゲート内に居座り、被害者はまんまと搭乗を成功させた。それゆえ、役目を終えたゲート内は翌日の到着便まで人の出入りが止まる」
「搭乗ゲートに潜んでいたと?非常識にもほどがある。もっと論的な解釈かと、期待はずれだ」
「可能・不可能、現実的・非現実的。これらは、あなた方の仕事。私は想像の範囲内で破綻をきたすことのない見解を述べているに過ぎない」アイラは続ける。「最終便の着陸後、おそらくは最後に機体を降りた。乗務員たちも同じゲートを通過するでしょうし、蛇腹に伸びるゲートは折り畳まれた。次にゲートが伸び、機体の搭乗口と連結する正確な時間を被害者は当然調べていた。その間の居場所も確保をしていた」
「だから、どこも身を隠す場所はない」
「ええ、隠れてはいなかった」
「ロビーから丸見えの搭乗ゲートの入り口にずっといたってことですか?」、とカワニ。
「その場所にいて許される。理由は何でしょうか。次の便には私たちが乗り込む。乗務員たちを納得させる、その場から引き剥がされず、居座り続けられて、しかも私たちにその所在を明かさぬよう釘を刺したのです、音楽業界に関わる者として」
「僕らの関係者だって言い張った!アイラさんは物々しい警備を嫌います、ほとんど僕が周囲のファンたちから身を挺して守る。そうかぁ、思い出した。航空会社とのやり取りで警備体勢の話題は出ていたんです。アイラさんは断るだろうし、僕の判断で配備は見送った。有名人ともなれば、ゲートは近づくにはもってこいの狭い空間ですもん、逃げ道もないですし。ですけど、やっぱり刑事さんの言い分が正しいですよ。空港関係者から不審者の目撃談が寄せられていそうに思いますよ、素人考えですいませんけど」
 それに種田が答えた。「搭乗前のゲートは捜査対象から省きました」
「だったらアイラさんの推理が合ってる……」
「まだ不完全」種田は間髪要れずに言う。「不審者の目撃についてJFA航空の地上係への執拗な取調べは行わなかった。ただし、被害者の顔写真は見せました。つまり、……」今度はアイラが遮る。
「つまり、JFA航空の地上係が私が述べた状況においては、被害者の顔を必然的に記憶していなくてはならない。しかし、実際は被害者がJFA航空の地上係に認知されてなかった、といえる。ようするにゲート付近で警備の真似事をする被害者と荷物棚から見つかった被害者との不一致が証明されてしまった。取調べは無駄に終わったはず、手間が省けて良かった」種田の息遣いにアイラは言葉をかぶせる。「ありえない、という認識は備わる常識とその場の状況に大きく影響される。当人の感知を問わずして外部から加わる操作を無抵抗に受け入れる、また無頓着に課せられた仕事、こなすべき目的や生活を維持しようと、平均に戻ろうと力を働かせる。私たちの搭乗がそもそも異常な出来事であり、それに輪をかけた被害者の特殊な警備だった。パイロットや客室乗務員たちの通過に際し、『アイラ・クズミが乗り込む機体は次の搭乗機ですか』、私の存在をほのめかす軽口をさらり言ってのけてしまうと異空間に晒される。私に興味があろうとなかろうと、有名な人物が乗り込むのだから、ゲートに常駐するJFA航空の地上係たちの浮き足立った仕草が警備に立つ被害者の存在を怪しさから引き剥がした。完璧ではなかった、後日警察に報告をしたかもしれない。そうです、顔は一致しなかった。あなた方は捜査を委譲された、聴取を受ける乗客だったのですから、おいそれと捜査権は移されずにいたとの思われる。すなわち、あなた方の前に捜査に当たった方々が無用であると、JAF航空の地上係りの目撃情報を見間違えもしくは取るに足らない情報に分別をつけてしまい、そこで情報がせき止められた」
「話がちぐはぐです」カワニが両手を広げた、左手が若干早く、遅れて右手が広がる。「死体と手を貸したか息の根を止めた余分なもう一人が機体に乗っていなくちゃなりませんよ。ゲート内での警備はぎりぎりありうるかもしれません、いやあったとしましょう。ただ、席の増減が確認できなかったことを踏まえるとです、ゲート内にいた警備はこっそりロビーに出てくれないと不都合ですもん、だってそれなら被害者の顔写真と警備人の顔は一致してるはずなんですから。ゲート口の出入りはアイラさんの警備よりももっと強くJFA航空の地上係の印象に残るでしょうし、さすがにそれは刑事さんたちへ情報が行き渡る。もっと言いましょうか、ゲートを出てしまうと空港内の監視カメラがつき纏う。警察は監視カメラのチェックを怠るはずもない。ですからアイラさんの説明は不完全に、思えてしまうんですよ」
「二人は多い」アイラは片目でカワニを射抜く。「一人だった。なぜなら、搭乗者は被害者なのですから」