コンテナガレージ

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鹿追う者は珈琲を見ず 11-3

「同年代の方に尋ねるのが一番かと思いまして、……この表現は標準なのでしょうか?」
 分厚い日誌が天板をすべる。赤茶のカバーを開くよう言われた、鈴木は煙草を指に挟むと指定された日時を捲った。いわれてみると逸脱の極致不可解で質朴ともいえて、ただしそれは繁文縟礼なるお堅い記録の繰り返しを誤魔化す当人たちの遊びにも感じられた。無論異常に分類される記述だ。
 熱を感じた。顔を上げたら美弥都と山城が顔をつき合わせて日誌を覗き込んでいた。どちらも真剣そのもので、驚いた自分が場違いな反応であるかのように、少々恥ずかさに汗が噴出した。美弥都は亡羊とどこかの世界とコンタクトを採り、隣の山城は年代の差に苦しみ、これが事件を紐解くヒントだとどこか決め付け威圧を放っていた。殺意に満ちた気配はすっかり早期解決を願う支配人の神経質な雰囲気であった。
 空気が変わる、天気雨が降りた。長方形の窓から秋を背負った風が顔を払った。