コンテナガレージ

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本心は朧、実態は青緑 1

 三時間か四時間を消化、夕方に迫る時間帯に達した時点でアイラはおもむろに手を止めた。

 カワニの姿は見ない。

 会場設営は教会内の木製のベンチを利用すると、到着の直後カワニが話していた。ベンチは中央の通路で分断されて左右それぞれ、縦に十五脚が並ぶ。一つのベンチに四名が座れる。横一列に八人が並ぶので、百二十人の観客動員か、アイラは席に着いたままでの参加を促す必要性を伝えるべき、と感じた。最後列からも見えるように、ここでも簡易なステージが設置される予定である。

 ひと段落、リハーサルを終えた。

 彼女は聖書を読み上げる演説台が居残る。

 よく響く声。不思議と天井を見上げる工夫は、両脇のステンドグラスと折上天井の形作る格子と中央の平面とサイドの傾斜が牽引。お寺の天井に思えたのは私だけだろうか、寄贈者の氏名が書かれていないだけでも見ごたえがある。

 等間隔でぶら下がったランプ。柱は悠然とベンチの間に冷たく厳かに沈黙を守る、色白。誰もおしゃべりな奴はいない。それだけで、これだけで居心地が良かった。

 空腹を訴え、姿を見せたカワニと食事に出た。スタイリストのアキとはレストランで合流した。席に座るなりアキは端末と対話、無言は大い喜ばしいこと。地元のファミリーレストランである。アイラは食事を単なる栄養補給だと考える、ミリオンセラーの歌手だからといって、高級な店はむしろ嫌煙しがちだ。

 昼食とも夕食とも判別しがたい名目の食事をもくもくと摂り終えて、また教会に戻るった。食事の最中は無言を貫いていた。