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ワタシハココニイル2-1

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「もしもし、鈴木です」
「なんで携帯にかけてくるんだよ、署の電話にかけ直せ、もったいない」
「相田さんがどこにいるのかなんて、知らないですよ」
「いいから、それでなんだよ!」
「喧嘩腰はよして下さい、驚くじゃあないですか」
「だから、さっさと要件を言えよ」
「こっちがかけてるんだから、そっちは料金を払わなくていいのに……」
「切るぞ」
「ああっと、ストップ。調べて欲しいことがあるんです」
「M車の事故か?」
「なんで分かるんですか?」
「へえ、言ってみるもんだな」
「なんだ、当てずっぽうか」
「なんだとはなんだ。お前が駆りだされて何も考えていないとでも思ったのか。こっちだって一応、頭ん中で考えているんだよ」
「暇だから、みんなで推理していたんでしょう」
「ち、違うぞ」
「何だ、当たったんですね。言ってみるもんですね」
「切るぞ」
「待ってくださいって、そんなに怒らなくても。熊田さんいます?いたら代わって下さい」
「鈴木です」スピーカーの摩擦音を頼りに鈴木は名前を告げた。
「なんだ?」
「お疲れ様です。部長に調べさせられたM社のことなんですが、もしかすると例の組織との関連を見いだせるかもしれません」鈴木は手短に車の摩耗した部品によるクレーム被害について熊田にできるかぎり詳細に話した。M社とは、以前に起きたショッピングモールの事件と同一犯の関連が疑われ、同社のサイト書き込みについても調べを進めた経緯があったが、その事件の終結に際して関連性は否定され、M社の捜査は事実上打ち切られた。しかも、そのサイトへの書き込みは死亡予告で、ある支店のウェブサイトに書き込まれていたのだ。
「むーん」電話口で熊田がうなった。「他車の劣化部品に取り替えた可能性もある。目的は不明だがな」
「ええ、なんだか意味が通らなくって変なんです。とにかくM社としては、事故の発生だけは食い止めたいとのことです」
「お前はその購入者に話を聞いてこい。M社には上層部を通して即時、販売の停止を求める」
「大損害ですね」
「ああ、しかし、考えようによっては信頼性は高まるのではないかな。どちらに取るかはユーザー次第」早期の発見と迅速な対応、真摯で誠実、あるいは不良品の販売、安全性の不信感。
「そうですね。とりあえず捜査はこのまま継続してみます」
 通話を終えて、熊田は携帯を相田に返した。食事を求めるペットの眼差しで相田が見つめる。「なんだ?」
「鈴木はなんて言ってました?」
「クレーマーを訪ねるそうだ」