コンテナガレージ

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パート1-4

 僕は首を振った。帰りの車内で考えることがなくなるではないか。考えから離れて、突き当りを左に、持ち物検査のゲートを通る。雇われている警備員の男性に鞄を渡す。中を見てもいいかと、一応こちらに許可を取るが、断ったとしてもどうせ調べるのだから、いいや、それがこの国の同意という習慣だ。あずかり知らぬところで勝手に物事が進むのを拒む性質。なので、政治や市政、ひいては小規模なコミュニティにまで顔を口を出したがる。

 肌の黒いもう一人の警備員がゲートを通ると、別れの挨拶を告げる。義務的な声ではなかったと思う。僕の体のせいだろうか。この国はこういった人たちに人一倍心血を注ぐ。それはまた、ネガティブなベクトルに傾いても同様の反応が散見される。拳銃の発砲音は二度聞いた。花火よりも分厚く、かんしゃく球よりも短い音だった。感情が沸騰する箇所と、温度を見極める必要性が僕にはあるだろう。そういった人物たちには格好の的であるからね。

 エントランス。僕へ手を振る人物を見つけた。駆け寄る。

「ただいま」

「お帰り」頭に手が置かれる。「母さんは仕事だ、急用ができたらしい」両親は共働き、父はエンジニアで母は料理研究家である。今日は父が迎えにやってきた、めずらしい。

「そう。夕食はどうするの?」母は仕事に疲れて帰宅すると、食事はいつも冷凍食品かピザを注文するかの二択を迫る。父がキッチンに立ち、奮闘するも、無残に出来上がった食べ物を好んで口に入れたいとはお世辞でもいえないほどの、惨劇が引き起こされて以来、包丁とお湯を沸かすことは母から禁じられていた。ただ、僕は特別、不満はない。こちらの家庭の味や普通という事例を持ちあせていないからかもしれないが、複雑な味覚を必要とする料理人に将来を重ねるつもりはないので、成長を妨げない程度の食事が補給できれば問題はないのだ。

「冷凍のピラフがある、それにブロッコリーも。ああ、あと鯖の缶詰がまだあったな」

「じゃあ決まり」

「外に食べに行くか?」

「外食するお金が家あるとは思えない」僕は父と連れ立ってエントランスを出て、裾が広がる階段を下りる。