コンテナガレージ

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パート1-3

「キャプテンフックにでもなったつもりかよ」右から声が聞こえた。体勢を四十五度右に回転させる。小太りなクラスメイトが無駄に床を蹴って天井を目指してる。

「体が大きいっていうのと、太っているっていうのは違うらしい。動けるなんとかは、体のいい表向きの言い方で、つまりそれは、標準の体型をオーバーしていると言えるんじゃないのか」

 クラスメイトは動きを止めて唇を差し出す。かと思えば、陰険な口元が左右に引かれた。「お前の言葉はなまっているって知らないのか?くくくっ」

 不自由さを言葉に見出せるとは、思いもよらなかった。誰がどう思おうと、こちらには関係のないことだ。落ち度を見つけ、優位に立つ姿勢そのものは、こちらに隙を見せていること、どうしてそこまで考えが辿りつかないのだろうか。発言のリスクはやはり身を揺るがすショックを体験しなければ、学習に及ばないのかも。見えないと見えてくるものは多い。矛盾しているが、これが僕がこれまで身に降りかかった事象である。まさに体験。特に腹も立たない、彼の思想やバックグラウンド、現在の心境や隠された本質などを背後に流れる僕までの冒険を戻ってその道筋を辿れば、また高性能なプログラムの処理に出会える。どこを簡略化し、分岐を作り、自問に答えてきたのか、自宅までの貴重な問題だ。

「ありがとう」

 クラスメイトの彼は、拍子抜け、困惑の表情を隠せない。彼は、悪口を言い合う準備をしていたのに、僕の態度が迎え撃つでも逃げるでもなく、賞賛の言葉を吐いたから。それは一言目のように動きが止まるだろう。ただ、彼はまるで違う土俵で相撲を取っていると、気がついて止まったのだ。彼を観察しても思うのだが、やはり人はデータに基づいて行動を余儀なくされているように思う。ほら、開いた口を閉じて、彼は逃げていく。僕以外のクラスメイトのほとんどは傲慢な彼の言動、圧力に似たような反応を示したのだ。そこに彼は優位を見出し、僕は逆手に取った。