「おっしゃることは重々承知した上での報告です。どうかご決断を!」彼女は回答、合意を迫った。
「……私の権限で、市場に出回る製品の製造中止権も付帯してください」
「一度、消費者の手元に渡ると、回収は困難ですが」あざ笑う彼女。
「出回っていた商品は放っておいてかまいません、私のタイミングで、以降の製造を止められたら、残りのチョコはお渡ししますよ」
「やはり、まだ持っていたのですね」
「ですから、持っていないとはいっていませんよ」
「私の独断では即座に回答はしかねます。上司に連絡を取りましょう」
「あなたの手柄が横取りされませんか?」
「ご心配には及びません。データの管理は私のチームが行っている」比済は端末を取り出すと、店外へ出た。二人の男は取り残されて、自然と沈黙が二人へ視線を向けさせる。注目を集めたいのならば、特別な格好で黙っていればいいのか、店主は二人の男を通じて学習。
館山が悲壮感を滲ませて謝る。「すいません、私が話を打ち明けたばっかりに」
「チョコに手をつけずに、彼女が言うほかの企業の商品が製品化された場合において、残された可能性、つまり僕へチョコを渡しに来た人物の存在とそのチョコが判明しようものなら、彼女が君と無関係の人間でも、僕の前に姿を見せたかもしれない。まあ、確率は低いだろうけど」
「もう少し、相手の事情を把握していれば、こんな大事には……」
「僕は、単に時間が割かれている、としか思っていないよ」
「そんな悠長に、だって十億ですよ、十億。事情を知った人が店長を襲う理由には十分すぎるほどです」
「だからだよ」店主は目を細めていった。「相手に主導権を握らせて、僕自身の安全は手元のチョコを彼女たちに引き渡して保たれる。また、彼女たちは他に製造過程や栄養素の秘密を死守する。ただし、製造中止の権利は僕に帰属。中止権の発動はチョコと僕の安全、両方をかなえてくれる」
館山は感嘆の言葉にならない、声。「ひゃああ、店長。そこまで考えたんですか、今の会話の中で?」
「彼女が受け入れたらの話だよ」
「製造は販売後には早急に中止にするんですよね?でも、少量は作られて、消費者の手元に渡ります」
「漏れ聞こえるバランスで判断しようと思う。無理に、調査には行かない。もともと人ごみは嫌いだしね」