コンテナガレージ

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静謐なダークホース 4-7

「帰って」

「要請には従えない、残りを受け取るまでは」傾けた首。彼女は、ケースの一つに手をかけたようだ、厨房からは彼女の手元は隠れている。

「店長さんが、素直に従ってくれない事態は一応想定しておりました。そのための手段でこれをお渡しするのは、多少気が引けます。だって、あなたは必ず首を縦に振りますからね」

「何をもってきたって言うのよ」館山は知り合いにくいかかる。眉間に皺がよる。片方の足に体重を乗せて、胸の高い位置で腕をがっしりと組んだ。

「正当な価格、去年の夏頃に推移していた平均価格で白米を購入できる行使権の譲渡です」

「行使権?」館山が聞き返す。

「一定水準の売り上げ、商業規模、商品数、社員数などの基準を満たした一握りの企業に授与される権利」店主は、館山のために用語を解説した。「しかし、行使権の個人使用は聞いたことがありません」

「あなたは店の経営者でもある。あなたの行使は個人事業主の行使、つまり企業の行使とみなされる」どうだ、彼女の顔はそういっていた。

「適正な価格を持ってお米が手に入る、とても魅力的ですが、お断りします。白米目当てのお客が増えたら、これまで獲得し、店を気にかける常連に食事が提供されない事態に陥る」

「常連以上の優位性が保たれるのですよ、並ぶのです、低価格の白米を求めて」

「店を開ける必要性は髪の毛ほどの価値もないでしょう。黙っていてお客が寄り付く店、ただ待ち望んでいるのは思考を諦めてからで結構ですよ」

「そうですか」比済は息を吐く。「わかりました。……もう一つ、提案があります」仰々しい前置き。もう一方の鞄も開けられたようだ、左右のストッパーをはずす音が鳴る。通路、比済の背後に姿勢よく構える二人は、銅像のように動かない。雪が肩口に乗っている、ここまでは地下鉄ではないのか、するとどこかに車を止めた。路上駐車は無理だ。近隣の駐車場に止め、歩いてきたのか、店主はサングラスの二人へ視線を投げた。

「研究開発にあなたが携わった証明書。今後は、開発された栄養素配合の商品、すべての使用に際し、あなたへ三パーセント返還が認められた、という権利を発行します」

「まだ、研究段階で、証明書ですか。気が早く、そして信憑性は限りなく低い」