コンテナガレージ

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静謐なダークホース 6-1

 数時間の睡眠、早朝に起きる。目覚ましはいつも僕が止めていた。ほとんど時計の機能。それならば、壁にかかった時計や端末で用が足りる。引火しそうな火の元に消火器のホースを向けているみたいだ。

 昨夜は自宅への長い道のりの休憩に終夜営業のレストランで休憩をした。仕事をいつも頼む弁護士と税理士へそれぞれ同様の文面のメールをそこで送った。足元がおぼつかなく、立ち止まり、かじかんだ指先を動かす効率の悪さを避けた屋内への退避。

 コーヒーを頼んだら、ドリンクバーを勧められた。誰でも頼むらしい、それほど水分に飢えているようにみえたのか。

 滞在時間は十分ほどであった。コーヒーは煮詰まった味。淹れたて、とは程遠い。早々に店を出る僕の姿が珍しいのか、店員が会計でしげしげと見つめる。何のための来店か、という疑問を僕の顔を注視。失礼、そういった概念は持っていないらしい。おつりを渡すのが遅く、見つめているので、僕はレジを離れた。

 自動ドアが開いて、呼びかける声。見とれた後悔がいつまで継続されるか。うん。予測は長くても二日。この件に関して上司や上の立場の同僚の注意を受ければ、四日ほど。一週間後は、忙しさと日常にかまけ、記憶は薄れるだろう。

 昨夜の記憶をたどり、ソファに座る。寝室の端末をつかむ。クローゼットから上着、手袋を手に取る。見渡して、カーテンを左右に開ける。帰宅時間が深夜であるため、本来ならば閉めた状態でも不都合にはならない。不要な行動だと、僕は解釈。リビング、ソファに腰を下ろす。残りが五分。部屋を出るまでの時間だ。端末を操作、メールを開く。新着のメッセージはない。

 リビングのカーテンも開けたままであった。こちらも昼間に光を浴びる必要に迫る動植物などは、部屋に存在していない。そのため、閉める、というのが妥当な対応に思えた。リビングカーテンは閉めて、少し早い時間に部屋を出た。

 最寄り駅。地下鉄に乗り込む。端末を左右、対面の列と同様に覗き込んだ。二件の返信があった。弁護士と税理士。時間の指定に合わせ、どちらも立ち会ってくれるらしい。ただ、税理士の方は多少の遅れも加味してほしいとのこと。昨日の今日である、文句は言えない。

 おなかが鳴った。乗客と目が合う。自然な摂理、健康な証拠。貧しさの象徴、いつの時代のことを引っ張っているのだろう、疑いもしないからか。納得。相手の感情が読めたら、僕は気が楽だ。

 車両が駅を三つ通過、そして停車。降車、階段を昇降、改札を通過。進路をふさぐ人々を忌避。左折。ドアを開閉。狭小の階段。降下する市民に進路を譲る。会釈。昇降。地上。空に挨拶。画面が細動。再始動、前後運動、左折、直進、開錠。入店及び出勤。電源オン。低温に震え、服を着用。準備が万端。