コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが2-3

 軽食が運ばれた。先ほどとは別のウエイター。若い男性特有のすらりとした無駄のない上半身、露出した首元に視線を合わせて、早急に悟られないよう稗田は皿に乗ったサンドイッチを待ちわびたように注視した。ウエイターが去って、ほっと息を漏らす。

 対面の真下が笑っていた。それもそのはず、私は気を使いすぎるらしいのだ、これは真下の助言。相手はそれほど、こちらに気にかけてはいない、もっと大胆に自分を表現しても罰は当たらないから、と入社した当時に言われた言葉を思い出す。

 お喋りと食事が重なると、当然食べ進める速度は落ちる。腕時計で時間を確認、店までは約五分と信号待ちの時間を入れて二、三分だから、十分前に店を出ると仮定すれば、そうね、十二時四十五分に席を立つのがベスト。稗田は目的を果たすべく、まずは食事を片付けることにした。

 真下のホットケーキも運ばれて、二人はそれから十分ほど、どちらかが話し、どちらかが聞くという役割の取り決めを交わした。互いの食欲を効率的に満たす。

「ブルー・ウィステリアの新製品発表と発売のセレモニーを大々的に行う日本一号店に、近隣店舗の通信機器販売会社の支店長が足を運び、その場所にいたのはなんら不思議ではないと思う。ただ、屋上で見つかった、それも死体で発見されたのって、ブルー・ウィステリアの関係者が怪しいよ」稗田の意見は真下の了解を得たらしい、真下は判断を濁さない性格だ。不明瞭は点には首を振って、推理を止めることも厭わないのだ。私は続ける。「それでね、メディアが隠した死亡者の氏名は、新商品の足を引っ張る事態を懸念したブルー・ウィステリア側の圧力だと、思うの」

 ブルー・ウィステリアの屋上で死体が発見された、というニュースは新商品の発売と関連付けて各報道機関が第一報を流したが、その後追加の詳細は一切報道が規制されたように途絶えた。昨日の今日であるから、情報の取得に遅れているか、ブルー・ウィステリアの世界的企業力による情報規制なのかを、判断するには早計だとは思うけれど、どうにも支店長の突然の無断欠勤と屋上の死体とを関連付けてしまう、稗田である。