コンテナガレージ

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手紙とは想いを伝えるディバイスである7-1

 三F

 大幅に遅れている作業をこれからどのように取り戻そうか。社長の代理の仕事は病院でこなした数件のみで、それ以来の取り組みだった。社長宛のメールが私に転送されている。不意に、周囲の視線が気になったが、誰も気にかけている同僚はいない。しかも、私が社長の仕事に取り掛かろうとしているとは夢にも思っていないはず、いいや、私が何をしていようと、もし社長がこの席に座っていようとも自分たちの仕事が最重要なのだ。私もそうだったはず。

 音楽を再開。オリエンタルな響き。

 メールは六件。とりあえず一件目から片付けるとしよう。効率は後回し。一件目はデザインの仕事とは思えないほどの大掛かりな、プロジェクトと言い換えたほうが捉え易い、住宅地の土地開発、都市デザインの依頼である。建物は専門家つまり建築家の免許を持つ人材が会社には在籍し、彼らがその役割を担う。ただ、都市の開発はきいたことがない。一企業なら社運をかけた仕事だろう。何を心配している?気をもんでいるのだよ、私。

 私は、私は社長である。

 現在は社長なのだから臆するな、

 トレースしろ、社長になりきるんだ。

 がんばるな、考えるな、単純に思い込め。

 エンドレス、リピート、輪廻、回想、ループ、振り出し、周回遅れ、やり直し。

 リフレイン、再送。繰り返して曲頭。

 過去たちが手招き、取り合うな、限られた視界だけを見るんだ。

 まずは可能、不可能の判断。これは……できる。では、決定。デザインは一名に任せるべきか、それとも複数か。デザイナーの個人的な指名があったならば、その人物に建物を任せ、建築専門の人材を補佐につける。補佐に口出しは無用、意見を求められた時にだけ答える。これは可能と判断して玉井タマリは受け入れ可能の返信を送った。

 続いては、社屋のメンテナンスについて。こちらは定期的なメンテナンスのスパンを狭めるように回答を返信した。