コンテナガレージ

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プロローグ2-4

 暗闇に火の玉を作る巻紙と葉っぱ。赤の近くは明るく、しかしその周辺は、側溝を越えた向こう側の闇より深い。灯台の真下が最も暗いことと類似。
 かき消した明るさ。もう視界は煙草の色を捉え切れない。
 明るければ私が見られ見えて、しかし近辺の闇を漆黒に染める。
 片や、闇と手を組むと、それ、みたことかと明かりが無鉄砲な振る舞い。
 ただ、ひっそりと暮らしたかっただけなのに……。
 悲観的、感傷的な私は久しぶりの対面だ。アイドリングのエンジンが再始動。賢い機能。
 環境のため?いいや、売れるため、買ってもらうため、それは生き残るための明かり。
 照らさなくは、取り込まれ、明かりにかき消されてしまう。
 仕方ない。しょうがない、どうしようもない。打つ手なし、防戦一方、滅多打ち。
 打ち負かす、というほどの意気込みとはニュアンスが異なる。
 不本意だわ。空虚な前方は昼間の明るさを取り戻す、ライトを遠くへ。ハンドブレーキを解除。
 下り坂、のそっと車体は法則、位置エネルギーを運動に変える。
 切り離す覚悟を固めた私に流れは止められなかった。
 これで良かったのだろうか?過去を振り返るが、思ったそばから粉粉に打ち砕く。染み付いたプロセス。そこに、昔に、かつてに、記憶に私は一つも生きてはいないのだ。わかっているつもりでしょうに、体力の低下が招いた久しぶりのナーバスな思考過程と、彼女は自らを観測し、振り切った。
 新しい一本に火をつける。灰皿を引き出す、行き届いた配慮、灰皿の位置をLEDライトが居場所を知らせる。
 ここはどこだっけ、彼女は煙草を挟んだ左手を伸ばし、ナビを起動させた。
「お呼びでしょうか、ご主人様。行き先をご指定ください」機械音が出迎えと指示の要求。
「グランドパークホテルまで」
「かしこまりました。ルートを検索、所要時間を表示いたします。しばらくお待ちください」
「待つわ」私しか生きていないの……、それぐらいの時間はあるわ。