コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが2-4

 真下眞子は蜂蜜を丁寧に掬い、食事にピリオドを打った。私も負けじと、サンドイッチを頬張るも、トマトとレタスが飛び出して、紙ナプキンの助けを借りた。男性の前、とくに旦那の前では控える行動だ。大雑把な性格を控えた私を旦那の前では演じる。疲れはするし、旦那も私の本性は見抜いているから、さらけ出してもいいのだけれど、この歳まで月日を重ねるとそういった恥じらいに対する維持が薄れしまうように感じて、だから思いのほか、私の抗う姿勢は大胆で奔放なかつてよりも人生はうまく歯車がかみ合って、大きな歯車を動かせている、と思えていた。これまでがせっかちで早すぎたのだ。それでも、真下の前ではいつものこれまでの私が勝るの、息抜きかも、ここでバランスを取っているのかもしれない、口元についたドレッシングをふき取って、真下の注目する視線が感じ取れた。

「何か言った?」

「いいえ」湛えた微笑が氷を髣髴とさせるのは、私の思い違いかも。彼女はいたって冷静なだけで、中身は程よく温かみに溢れる。自らを主張するのだって、首を振ったり、あるいは一言だけ、拒否や賛成の言葉を端的に発するに留める。私みたいにべらべら、ぺらぺらなんて、言いふらしや弁解を嫌うんだ彼女は。

 アイスティーを飲む、ストローが細すぎて少量ずつしか飲み込めない。いつも口をつけて飲み干したい気分に喫茶店に入った直後は思うけど、いざ食事やら、たわいもない会話に費やした時間が適度な減り具合に感じ、滞在に気を遣う小心な私を助ける。しかし、一気に半分を飲み干すことはできなくもないが、口紅を直す手間を稗田はとても億劫に

受け取ってしまう。結局、右手で詰まる。これが、理に適ったストローの太さということなのだろう。