コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが4-4

「日本支社長の林といいます、先ほどお見えになった方々とはまた別の管轄で?」多少、外国の訛りが混じる。海外の生活が長いか、両親のどちらかが日本人なのだろう、種田は管轄をまたいだ要請を包み隠さず林に伝えた。隣の鈴木の表情に驚きが滲んだが、交渉の術は身構える対面のコンタクトが狙い目である。彼から情報を聞き出せないとすれば、S市の情報に頼るしか捜査の全容を掴む手立てはない。呼び出しておいて、彼ら要請側は情報のすべては公開しない傾向にあった。末端のプライドが阻むのだ、よって種田たちには関係者の事情聴取が重要となる。まずはこちらが手の内を明かす、そして身構える相手の力を抜き去る。

「そうでしたか……」ほっとした、林は大げさにため息をつく。「死体の回収に踏み切ったのかと思いましたよ」苦笑いの目元は深い皺が寄る。無駄に取り繕う笑いを重ねた、偽りの証。

 高い声で鈴木が林の発言を掬った。「まだ、死体は屋上に放置されているのですか、今の言い方を聞く限りですと」

「はい。なにぶん、今日は知っての通り、新商品の発売日であります。表の賑わい、お客の目に建物内で起きた事件を公表するわけにはいかないのですよ。本社から強く要請がかかりまして、こちらとしては警察に死体の回収を一応正午過ぎまで待っていただく、配慮を取らせていただきました」

「商品の搬入と整理券の配布、それと食欲にタイミングを合わせ、一旦行列を解く。そして、荷物の搬出に似せた遺体を屋上から降ろす、という算段でしょうね」種田は言った。

 わずかに林は顎を引く。そして彼は動作に付け加えた。

「ただ、一つ懸念される事項がありまして」林は若干眉をひそめ、二人を見つめる。声のボリュームが絞られた。

「なにか?」鈴木がきく。

「建物の構造上、屋内から屋上へ通じる経路がありません。屋上へは駐車場に面した裏手の梯子が唯一のルートとなります」鈴木は斜めを上に視線を移した。数分前の映像を見返しているのだ。種田が言葉を受けた。

「つまり、目立たないような配慮が必要であり、その対策を警察が練っている、ということでしょうか?」