コンテナガレージ

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お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?5-4

 ランチが終わり、従業員たちが休憩から戻ったディナータイムに迫る夕方の時間帯。日の長さが懐かしく感じるものの、まだ晴れ間が覗く日中の模様であれば、駆け込むような日の入りとは思えないが、室内の照明は三十分前ほどに国見が暗い、といって点けていた。

「さっきですね、例の移転先のビルを偵察して来ましたよ、私」店主はまだ移転先候補の外観を直接見てはいなかった。手元のサツマイモを手にとって、じっと眺める僕に、小川は声をかけていいと判断と決断に踏み切ったらしい。彼女は背後のコンロの前で蒸し器に入れたサツマイモの出来上がり、中腰で構えて待つ。体勢が変わっていないとすれば、である。店主の視線はサツマイモに照準を合わせるばかり。

「そう」

「気にならないんですか?移転先は店長、だってもう決まったようなものだって、私思ってますよう」

「そうかな。僕はどちらを選ぶかを、話した覚えはないよ」

「もうっ。じらして一体なんになるんです。お客さんが離れるわけがありません。取り越し苦労、心配にしすぎです。心臓に悪くって、体調を壊しかねませんから、きっぱりと早くに決断するほうがいいんですう」

「小川さんの意見もまあ、認めないこともないね」

「私たちの意見を聞くって、店長は言ってましたけど、それってどれくらい、その意思に反映されるんです。例えばあ、私の意見とリルカさんと蘭さんの意見が違ったら、私の意見は天秤にかけられて、でも店長の意見が私を同じだったらつりあってっていう、一人の意見が同等の価値を持っているのかと、ううんとなんていったらいいんだろうかな……」

 肩を引いて店主は小川を見た。彼女は思い悩む人物そのものを腕と首の角度によって表す。