コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ2-2

「かぼちゃのスープが三つ入りました」小川が厨房に入り、オーダーを読み上げる。

「それで一旦止めておいて。十分ぐらいで再開できるから」

「わかりました、蘭さんに伝えます」

マルゲリータできたよ、もってって」館山が皿に載せたビザを小川に。取りに来い、という合図。

「リルカさんが運んでくださいよ。私だって手一杯です。これからジンジャーエールをもっていないとですから、よろしくう」小川は瓶の栓を器用に空けると、二つのグラスとボトルをトレーに載せていってしまう。

「あいつ」悪態をつきながらも、館山はサロンをはずし、ホールに出る。「ちょっと運んできます」

「よろしく」

 お客の波は定時に仕事を切り上げた一団が過ぎて、入れ替わりに第二波がやってきたが、空いたテーブルをそのまま埋めて、待機の一組を外で待たせるお客の入り具合であった。考えることは皆同じらしく、スープは閉店の一時間半前に二度目のストップをかけた。これ楽しみ、目当てにしていた、とお客の声、反響が大きかった。

 閉店後の店内でお客対応にかなり神経を使った、と国見がこぼしてた。僕への改善の要求なのだろう。明日以降の対応は考えてはいるが、仕込みは通常の量に抑える。今日が特別なのだ。

 片づけを二十分早めに切り上げるよう、店主は従業員たちに伝えていた。店の移転について不動産側への回答期限は明日一杯である。今日中に意見をまとめておきたい、店主は最終確認を伺うべく、閉店後に話し合いの場を設けた。ところが、店主は明日のランチについて考え続け、着替えを終わった三人がホールのテーブルに着き、声をかけられるまで、厨房を行ったり来たりと、その落ち着きのなさは移転の迷いと取られてもおかしくはなかった。