コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ2-4

 煙草をくわえて、火をつけた。いつ振りの煙草か、数日前に川辺で吸った覚えはある。刑事が来たときにも吸ったか、家では吸わない。だから、ポケットとリビングのテーブルの往復がいつも数本だけ折れた煙草を生み出してしまう。封が切られていないと互いの接触と干渉が強度と加えられる力の分散に役立つ。一本でも吸われると、封を切られると、強度は低下、吸われるか、折れて捨てられるかを待つ。結局は僕に吸われる末路。だって煙草なのだから。だが、非喫煙者の手元に渡ったら、あっさり存在は捨てられる。つまりは、早いか、遅いか、ということだ。すべてに通じるはずだろう、付帯するのが時間であれば……、と店主は煙をまんべなく吸い込んだ。

「まずはみんなの意見を聞こうかな、移転に賛成の人は?」僕は挙手を求めた。

 二人を窺って、正面の小川が手を上げる。

「二人は反対、ということでいいかな?」

「私は条件がつきます」館山は言った。こつこつと、つま先がテーブルの支柱を叩きあてる。国見に指摘される前に止めたほうが利口である、店主は館山に続きを促した。

「前に言ったような、その新しさと古さの融合っていうのは、正直お客の要求に応えているとは思えない。まして、話題のビルですよ。知ってます店長?うちの店とそこのコーヒースタンドを除けば、店長みたいに世間に疎い人でも、名前ぐらいは聞いたことのある店ばかりが同じフロアにひしめき合うんですよ。そのなかで店の売り上げと常連客をひきつける二つの要素が実現できるでしょうか」出店数の決定はまだ決まっていないはずだ、名だたる名店が候補に挙がっているという話題は僕にも聞こえてはいた。