「嘘?いつから?」鳥のように首を忙しなく鈴木は動かした。
「こちらが気付いてることは感知していない、と思います。喫茶店の壁際、階段を下りて左手、中央のボックス席の男女の真横のラインです。私たちよりも前に座っていたので、それほど気に留めていませんでしたが、待ち合わせにしては二人組みの会話が少なく、時間をつぶしてるような仕草、たとえば時計を気にするといった行動は見られませんでした。よって、彼らは一階のお客に用事があった、と予測されます。そして、現在私たちを追尾することで確証が得られました。S市警察中央署のどなたかであるならば、写真を撮って照合を求められませんかね?」
「大胆すぎやしないか?泳がせておくのが無難に思える……」鈴木は二度、頷く。「それで、どこにいるんだよ?」
二人は信号を渡った。
「八時の方向に一名、四時の方向にもう一名」具体的に言い表すと、百貨店の出入り口とバス乗り場が併設した開けた区域に一人、もう一人は向かいの通りを歩く。種田は彼女たちの上司、めったに顔を見せない幽霊のような部長の指令を尋ねた。「新情報というのは?」
「……聞かれないか心配だなぁ」鈴木が躊躇う。
「電話を盗聴する強攻策に出なかった点を参考にすると、まだこちらの動きを規則に準じて拘束する危険度には至っていない。彼らも情報を求める、私たちを泳がせたほうが利用価値があるのでしょう」
「もしかして、またさあ、手柄を持っていかれるってことか?まいったなあ」
「参るのは部長、いや、実質的には現場の指揮を取る熊田さんです」
「的確な指摘をどうも」