コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ6-5

「いいえ」種田は足早に通り過ぎる通行人を鈴木の背後に隠れ、やり過ごす。二人が広がって歩くには多少手狭な道幅である。駅前通りに比べてこちらの仲通りは比較的老朽化したビルが少ないものの、区画はビルの建設の最盛期、五十年ほど前の基準による。

「情報を」彼女は念を押した。コンビニが目印の交差点で二人は足を止めた。

「飛行船の当日の予約は事件前日にキャンセルされていたらしい、一週間前に予約の電話があったそうだが、キャンセルは直接、女性が山奥のあの事務所に訪ねてきたんだとさ」

「信じられる情報源でしょうか?」種田はいぶかった声で訊いた。すると鈴木は首をひねる。腕を組んだ右手の拳に丸めたにビニール袋の皺が覗く。渦巻状、穴からチョコが飛び出したパンを思わせる姿だ。

「うーん、部長のことだから、情報源は明かさないだろうね」鈴木は頷く、信号が変わる。促すように彼は先を導く、短めの横断歩道、住宅街ならば信号を作る意味を問われるほどである。「事件に絡んでるなら、顔を出してたまには指揮を執ってもいいような気がする。能力が低いっていう印象でもないんだよね、部長を見る限り」

 鈴木の考察には同感だ。とぼけた表情とたまにしかみせないその姿から、署内ではレアもの扱いや欠席裁判の常連として食堂や喫煙所では格好の標的されてしまうが、対峙するとよく人物が隠す爪がいかに鋭いかを知れる、いいや感じ取れるのだ、私に食い込む爪が想像に無意識に自動的に呼び動作なく、不意をついて喉を掻っ切る。

「やはり当日に飛行船は飛び立った」種田は投げかけるみたいに言い放つ。背後で交差点、青信号の誘導音声が鳴り響く。

「まあ、妥当な考えだよな。するとだ、二人の従業員のうちのどちらか、それか両方が嘘の証言を僕らにしたんだろうね」

「片方だけで成立する場合は、つまりどちらかが帰った後に飛行船を稼働させた」

「どっちかはあいての不審な点には気付いていたかもしれないよ」左肩を開く、鈴木は予測を語る。

「私たちが来る前にそれらを隠した」