コンテナガレージ

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店長はアイス 恐怖の源1-2

お題「コーヒー」

 数分後。ドアが開くなり、「おはようございます」、と女性が挨拶。彼女は種田。無表情な顔とショートヘアーが特徴的で、時間に正確。これがこの部署の最大の人員である。ミイラと称される部署。由来は、ミイラ取りがミイラになるように部署の重たい雰囲気に呑まれるからだそうだ。
 この部署の刑事たちは、時間通りに集まりこそすれ、とくに彼らには仕事を与えられない。また、窓際のひときわ幅を利かせるデスクはこの部署の部長職の席で、いつも空席である。めったに顔を見せない部長は見かけるとご利益があるさえ署内では言われている。それぐらいにこの部署は異常性と不自然さに満ちているのだ。
「今日も暇そうですね」鈴木が呟く。
「帰ってもいいんだぞ?」熊田が言う。鈴木を見つめる目線。
「いいえ、とんでもない。部屋に帰ったとしても、一人です。ここの方がまだましですよ」
「学校みたいに言うな」今度は相田が言った。
「うあっ、起きてたんですか」
「驚きすぎだ。すまん、コーヒー買ってきてくれ。眠気覚まし」
「ええっえ、僕がですか?」大げさな鈴木の感嘆。
「いいよ、お前の分も買ってやるから」鈴木の催促だったらしい、熊田にはたんなる拒否としか思えない。
「そうこなくちゃあ」
「っつたく、最近の奴は」
「それって口にしない方が身のためですよ。おじさんになった証拠ってテレビでやってました」
「いいからささっと買ってこい!」
「熊田さんも飲みます?」話が熊田に振られる。
「ああ、頼む。ブラックだ」低い声、朝はいつも声が低いと、熊田は自覚している。
「俺もブラック」
「種田は?」鈴木が聞いた。
「私にも同じものを」
「はい、はい」
 鈴木の姿が見えなくなると相田は首を鳴らして大きく深呼吸。
「何が楽しいんだレースを観戦して。同じコースを延々と走るんだろう?」
「熊田さん、車に興味ありました?」
「訊いてるのはこっちだ」
 肩をすくめる相田。「おもしろくはないです正直。エンジン音を聞いていたら眠気が襲ってきますしね。ただ、刻々と変化するラップタイムと順位と前後の車とのタイム差、次のピットのタイミングやめまぐるしく変わる天候と路面温度からチーム監督に成り代わって作戦を立てれば、案外楽しめます」
「子供の時からか?」
「そうですね。大学生の時はレース結果だけは追いかけていましたけど、……この歳でレースを見ているのはやっぱりおかしいと思いますか?」
「おかしいと思うのは他人だ。お前が好きならば余計な詮索は不要だと思うがな」
「そうですよね」
 鈴木がそれぞれにデスクに買ってきたコーヒーを配る。熊田、種田は代金を支払おうとしたが、片手で鈴木は制した。彼のおごりと二人は判断する。相田は鈴木に小銭を渡していただろうか、熊田はつい数分前の記憶をめぐらす。その間に、室内には仄かにコーヒーの香りが漂った。