コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって2-3

 そして西へ信号を渡った。時間が止まったみたいに、車は止まったままだ。運転席の顔と何度も目が合う、車を降りて、流れの回復を待つ人も数人。しかし、美弥都は渋滞発信源を、ラウンドしたビルの玄関口、交差点の角に立ち、眺めた。彼女が正対する西に通りを進む現れる、ビルの隙間、路地を通り最短距離でコーヒースタンドの店に出るのだが……、面倒ごとに巻き込まれる覚悟で時間の短縮を図るのがベストか、このまま南下して目指すか、彼女は数秒ほど悩んで、進路を渋滞に取った。

 警察の赤色灯は未確認なので、呼び止められ職質を受けたり、あるいは遠回りするよう通行を妨げられたりする確率は大いに低いと考える。しかも、こちらは仕事の名目があり、不審者には間違えられないだろう、この服装は一目瞭然のはずだ。彼女は丈の短い黒のプルゾンを前を開け放った着方。エプロンは解いたものの、無地の白いシャツとタイトな黒のズボンにこれまた無地で黒のスリッポンは制服そのものであった。

「すいません!」縦の通りから中に入った三本目の路地を目視で数え、体を傾け曲がる直前に、右側、つまり進行方向、人ごみ、渋滞から声がかかった。切迫した音声が、美弥都が足を止めた理由ではない。非情を訴える声にしては、低音域が聞こえた、彼女は違和感を覚えたのだ。