コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

適応性4-2

「傷の直径が二センチ、穴は円に近い形状です。尖った筒のようなもの、たとえばボウガンの矢が刺さった穴というのが適当でしょう」

「何故その方は発見現場に遺棄されたのでしょうか?ゆかりのある場所や勤務先あるいは自宅から程近い近距離に現場が位置していたのですか」

「バスの利用開始の正確な日付はわかっていませんが、ある時期から定期的にバスを利用していたようです、亡くなった女性は」

「利用の時間帯は?」

「最終便がほとんどです。運転手の話によれば、毎日の利用ではなく、数日姿を見ないときもあれば、週末に姿を見かけていたこともあったそうですね。それからバスは早朝と深夜のみで、日中の巡回は正午前後に一便、そのほかは行っていませんでした」熊田はフリーズした美弥都に訊く。「何か気になりますか?」

「目的の場所へ赴く手段にバスは利用されていない、であればバス以外の乗り物でその場所へ運ばれなければ彼女の移動の理由を説明できない」隣の種田が唐突、美弥都に対弁者に躍り出て顎を引き口火を切る。「つまり、事前に運ばれた彼女は乗車のバス停付近で時間を消費したと、結論付けられる」

「そうでしょうか」美弥都が言う。「定期的な行動を見せ付けるために、あえて車や他の移動手段でバス停付近に移動し、最終便のバスに乗り込んだとも考えられます」

「目的は?」種田が美弥都の意見に食いかかる。

「目的?それはあなた方が取り組む問題で、仕事であるの。捜査という権限を振り回せるのだから、あなたが思い浮かべられなくても一度は亡くなった方の行動を読み取らなくては」

「見せつけるとは誰に対して、いいやどこに対してのアピールでしょうか?」口を開きかけた種田をさえぎって熊田が質問した。美弥都はソーサーとカップを布で水分をふき取っている。

「行動そのものに意味はないのかもしれません。自然と人は予定調和を求める、この会話もそうです」美弥都は薄茶色の瞳をもって見つめる。「亡くなった彼女の姿をいつも顔を合わせる時間帯に見ないからといって、不安を募らせる。それは型にはまらない、ずれているからで、はまってしまえば気分は落ち着くのです。もしかすると、今後腑に落ちる事実が明らかに、ひょんな所から見つかるかもしれない。そうすれば、皆さんは餌に食いついて、引き上げられて、捌かれるか海に返される」

「つまり、組まれたシミュレーションに警察が含まれている、ということですか?」

「私はたんに思い浮かんだ可能性をあなた方へお伝えしたまでのこと。あまりにも、視点が狭くて不憫でしたので」美弥都は視線を熊田の左端に移した。小窓を見ているらしい。「店長が帰ってきました。ひと悶着を避けたいのならば、腰を上げてお会計の準備に移行したほうが、身のためですよ。また来店を希望するのであれば」

 ここの店主は熊田たち警察の来店を快く思っていない。お客として休憩のための来店は大いに歓迎するが、殺人などの生々しいワードを店内で他のお客が聞き取れる声量は店の収益減につながるとして、何度か注意を受けていたのだ。

 仕方なく事件の核心に迫る情報がつかめないまま、熊田は席を立った。会計を済ませて、駐車場、車に向かう時に、裏の倉庫から出てきた店主と目が合う。軽い会釈を互いに交わし、何事もなく熊田たちは店を後にした。

 熊田はハンドルを握って事件を振り返った。