コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって4-4

「僕にそれを聞かせて、一体何を求めるのです、刑事さん?手がかりをあなたは掴んでいる、と見受けられますが」

「中心部の地上交通を停止させる」毅然、彼はすっと天井に首を伸ばした。「移動は地下に限定、幸い一体のほとんどのビルは地下に繋がる、交差点に入らずとも大体のビル、建物に辿り着けるでしょう」

「だから?」

「ブルー・ウィステリアに直接、乗り込みます」

「捜査権は降りたのでしょうか?」

「依然として現場周辺の聞き込みは制限されたままです」

「現場ってどこです?」小川が尋ねる。忙しなく首が動く。彼女は数十分前の騒動とブルー・ウィステリアの屋上の死体を結び付けられないでいる。店主は思う。確かに、端末の利用が人体に悪影響を与えたのだとすると、ブルー・ウィステリアへの捜索は筋が通る。しかし、先週の死体に結びつけるのはいささか強引だろう。不可解さの共通項が認められるにせよ、店内で人が倒れたのとは異なる、交差点のど真ん中で事態は起きた、事実だろうと、関連が予測されようとも、店内の捜索には相応の説明と令状が必要だ。大企業である、おいそれと警察を迎え入れる、まさか……、そうまさかだ。

 小川の問いかけに鈴木は首を傾けて、応じた。気が引けたらしい、多少つぐんだように言葉を選ぶ。

「……不躾ですけど、お客さんの入りは確実に少ないでしょうね、今日は」鈴木は誘う、餌に食いつけ、目が言ってる。彼の言い分も一理あるか、店主は検討を量る。小川の両手を見つめた、そして彼女の瞬く目を捉える。そして、そして粉にまみれる石の調理台を彼女の肩越しに視界に映す。

 僕、僕の瞳、視線の先、小麦粉、手元、作りかけ、乾燥。

 連想を店主は促した、小川はくるりと体を反転、持ち場に戻る。ただし、耳は大きく広げてこちらの状況と推移を漏らさずに聞く体制をとる、体はほんのわずか店主側に開いていた。