コンテナガレージ

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私は猫に石を投げるでしょう3-3

 ペンというものは紙に書くことが前提であるが、その居場所は限定されないように思うのだ。ペンケースを持ち歩く学生や鞄を持った人ならば、しまって、使いたいときに取り出す。しかし、手帳だけを持ち歩くことも会議の場では良く見かけていた。まったく無意味な会議でも、それは絶対に手にもたれて、あるいは手帳に挟んで、さらには手帳にペンを保持するホールド機能もついていたりと、外装なしに単独で存在したがる。男はスーツの裏ポケットにもペンはつき物か……。そうだと考えれば、手帳に吸着するような機構が望ましい。また、限定された厚さに挟める機能も必須。取り外し可能が好ましい。不必要ならば通常のタイプを、手帳に取り付けたいのなら、アタッチメント機構を、スーツに忍ばせたいなら、メタリックやマットな風合いを。

 概要は大方決まり。問題は本体の形状だ。天井を見据える。別の視界でまた視点を留める。取り入れる情報を制限するため、また目をつぶると考えようとしすぎてしまうため、こうして景色を固定するのだ。

 重さも代えられる、というのはどうだろうか。人によって使いやすい重さは存在するだろうから、店頭で重さを確認させて、持たせ、自分なりにカスタマイズできるというのは?しかし、いまいちだ。あまり買い手に主導権を握られるとかって、商品が売れないことがある。どんと押し付たほうが、買いやすい。すると、三種類。かなり重めと重めに軽いの三段階。軽いから重くは移行できないが、かなり重めからは他の二つへは移行可能な仕組みがいいだろう。

 ここからは実地調査。フロアを隈なく回る。デスクのペン立ての形状をつぶさに観察。目があった暇そうな人物には話しかけて、ペンを手に取らせてもらう。もちろん、仕事のリサーチだと断った上でだ。どうにも、距離を置かれているらしい。あまり接触を好まない性質だからか。対抗心をむき出しに、近寄りがたい視線を私にぶつける社員もいる。あまり関わらないほうが身のためだ。

 あらかた見終わって、別のフロアにも顔を出そうとエレベーターを待ったが、そうだ、簡単には移動できないのだ。そういった決まりである。移動には相当の理由と認証が必要なる面倒さを私は嫌った。仕方ない、ちょっと早い昼食だが、今日は昼食を食べることにしよう。もちろんそこでもリサーチも欠かさない。食堂で、ランチを選ぶ際にも、食堂のスタッフからポールペンを借りて書き使用感を尋ねた。

 サンドイッチを食べながら、データをまとめる。高級志向と使い心地と無頓着に分かれた。高級志向は常に持ち歩く姿を見せたがるようにそのペンを使う。他のペンもあるのにだ。使い心地重視は、使用頻度が高く、コストパフォーマンスと口コミによる評価で購入を選んだものが多かった。また、無頓着の人たちは使えればよく、何よりも安ければいいという回答であった。書くべき内容が走り書きや長期間の保存や見返すことがない文章なので、という理由。