コンテナガレージ

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私は猫に石を投げるでしょう3-2

だが、開いてみて、拍子抜け。個人宛の案件しか今日はないらしい。たまにこういったことが起きる。それだけ、社員が集まったのだ。デザイン会社で数百人規模の人員を抱えて、個人個人が一件の仕事を受け持つ企業は、前代未聞だろう。新聞に取り上げたられたときも、インスタントなデザインと評されていたが、仕事とは作り出すことに意味があるのだ。待ち受けていては横並びでおこぼれを今か今か、と待っていたところで対価は発生しない。

 案件を読み込む。ボールペンのデザインが本日の案件。かなりの難易度、要望には、高級志向をイメージしたもう一本持ちたがるようなハイクラスの一品、とある。

 要するに、普段使いに加えて、資金的に余裕のある、文房具としての価値、見られる要素を含めた、使う姿をイメージせよ、ということだろう。ぱっと思い浮かんだのは、金属的なフォルムだったが、それは既存にかなり固執したイメージに近いから、却下。私は思いつく先、すべての可能性を挙げ、反証に対する意見の少ないものを選択する。しかし、時には反対意見多数の選択肢をあえて選ぶ場合もある。

 ベーシックな色合いが基本的には、高級感をかもし出す。奇抜な色合いと明るく、または素材の透明度もダメだ。マットな色合いが最適だろうな、私は考えはじめる。重さはどうだろうか。長時間使用するのか、はたまは短時間の使用かによって決めるべき、手が疲れては元も子もない。これは文字を書くための道具である。そのことは決して忘れてはいけない要素。するとどうだろうか、ある程度限られた重さを選ぶか、それとも軽めを選ぶか。机で書くことを想定すると、やはり重さ軍配が上がる。しかし、手帳など腕が固定されていないときの使用感は軽めがいいだろう。その中間ということも考えれるが、これはどこのメーカーも考えついてるはずだ。同じモノに商品価値はない、飽和した市場だ、やはり冒険心と遊び心と実用性の三つを兼ね備えた商品が好まれる、と分析した。

 実際に私は手元、デスクのペン指しに一本だけメモ用のペンを用意しているが、ほとんど活躍の機会はないに等しい存在で、デスクのライトよりも利用頻度は低い。

 手にとって観察。釣具の浮のような形状、中心部が張り出し、両端にしたがい細くなる。独特の形状に思えた。しかし、どこか気取った感じを受ける。ホテルで見かけるのと同一のタイプか。考えを吐き捨てた。普段遣いのペンでなければ、あくまでも。飾りの重視は使い心地ちが二の次にされてしまう。いくら使い勝手が良くても、ペンとは呼べない。ペンについて考えが及ぶ。