コンテナガレージ

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私は猫に石を投げるでしょう3-4

 思うに、高級志向に傾いたペンは使いやすさと見た目の落ち着きが暗黙の了解に近い頻度で姿を垣間見せる。

 私は考える。見られているのだから、他者の視点から見た形状や視点と使用者との違いがほしい。

 角度と光の当たる距離で色の感度と光沢の変化をつけられないだろうか、手元では落ち着き、離れて目を引く。

 決まりだな、あっさり即決。サンドイッチを一気に口に押し込んだ。コーヒーも味わってなどいられない。さっさと流し込んで、トレーを下げた。行動は迅速に、思いついたらこれまでの私を置き去りに食堂で食べる私を意識からことごとく消し去ってしまえ。

 エレベーターを待つ。

 後はフォルム。ペンという形はこだわりと独創性。その合間が求められている。あまりに奇抜ではとっつきにくい。形状、形状……。手に持ち易い形状は時代遅れ。そういったノウハウはクライアントが持っている。形にするのは彼らの役目だ。うーん、エレベーター内で唸ったので一斉に顔が私に向いた、一人だけを残して。ドアの付近で考え込む仕草の代表である、顔に手を当てて一点を見つめる人物は、私と同様、運ばれる時間も抱えた案件について考えているようだった。

 不安定な形状を模索し、試す価値がありそうだ。使い勝手ばかり考えていたが、もしかすると少々、ほんの僅か、ちょっとだけ、改善すればもっとよくなる、その一歩手間で押し留めてはどうだろうか。売り出す際も、あまり触れ込みの説明では、商品の形状についてはあえて詳細を語らない。失敗作、と思われるかもしれない危険性との戦いをここでその責務を負ってこそ、後のヒットに繋がるというものだ。

 形状の模索を正午までの議題に、その後は仮眠室で二時間の休憩。起床してすぐ仕事に取り掛かった。まだ、見通しがついたとはいえない、形状の確定に行き詰っているのに仮眠の予定を入れること自体はなんら大胆な行動ではない。こうした思い浮かばない思考環境においては思い切って離れる作業が肝要で、その次の優先事項が、起きてすぐに仕事に切り替える。休息はきっぱりとそこで縁を切らなくてはまったく意味がない、何のために眠るのかを寝る前に私は言い聞かせる。休息は家に帰ってから十分に得られる、ここではリフレッシュに特化した眠り、割り切った睡眠と思い込むのさ。