コンテナガレージ

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あいまいな「大丈夫」では物足りない。はっきり「許す」が訊きたくて 5

昨日駆けずり回った成果を人数に限りのある車内は会議室で報告をする。移動車両は熊田の自家用車。

「銭湯で談笑する近隣住人は不科白(extra)で、雇われたのだろう。一芝居打って現金が舞い込む。前金と後払い、風呂で長湯をすれば好く、人員募集は黙って群がる。鈴木が訪れる間に出演者(cast)を数回入れ替えれば、番台の女将さんにも怪しまれず芝居が打てる」

「団体客ばかりでは怪しまれます」種田がきいた。

「高齢者とは限らない」熊田は前の走行車貨物自動車(truck)を見つめて言う、遠心力、曲道(curve)の頂点を通過、流れた体が戻る。「試合着(uniform)を着れば草野球の帰り、草蹴球(soccer)、合宿中の運動部員は最適だろうな。念のため銭湯の周辺に住んでいた頃の話をそれとなく番台に聞かせる。安全策を敷いていたら、脱衣所に二人ほど配置してたかもしれん」鈴木が訪れる確証あっての用意に思う、種田は納得がいかなかった。もう現地は見えている、対向車をやり過ごして筋向う、まもなく到着だ、聴取が先か、彼女は気分を切り替えた。

 奥の席を出てきた不動産屋の主人は女性であった。かなり若い、意外はそれのほかに高山明弘が家を借りた当時はこの女主人の前任者が手続きを行っており鈴木が会った人物とは異なるという。、もちろん銭湯にも男湯にも入っておらず、借り手の事情による深夜の借家引き払いにその日は立ち会っていたという。ちなみにコスモ不動産屋は名称と取り扱い物件を残しそっくり現女主人へ権利一切を受け渡した、適当な人物が見つかり次第仕事を引退する前任者の希望だったらしい。女主人は仲介人を通じたやり取りを行っており、当人同士の面会は設けずに、挨拶だけでも、申し出たが前任者が人と会うのはうんざり、と。人気のない道央あたりに移り住む予定だと漏らしていたらしい、仲介業者は釘を刺された電話口の渋った声を種田は察する、しかも確実にそこは空き家か同姓同名の転居人が移住してるだろう。また例の気配が漂う。

高山明弘なる人物と面識もなし。ここ数ヶ月に集まる名刺を登録した端末を調べた結果、該当者はゼロ件です、と拝借した画面が声を発する。公園に隣接する借家について土地建物は他者(高山明弘以外)の所有を女主人は言い切った。強めた言葉尻より個人情報は明かせない意を含ませる、交渉の場にはそれなりに立つということだろう。

 近隣に溶け込む、住人は一度契約更新の手続きを踏む借家生活を営んだ。高山秋帆が保育所、幼稚園に通わないのは経済的な事情を察して同年代の母親たちは質問を控えていたのだろう。もっとも義務教育は六歳を迎える年度から始まるのである、集団行動に馴染む導入施設の位置づけは今や共働きや家事、育児の軽減に子供が手を離れる有意義な時間の獲得に月謝を支払い勇んで預ける。本来の趣旨、意味合い、理念とはかけ離れている。批判はどうてもよい、秋帆は一人で外に出歩く気質ではなかったのかも。もしくは公園が目と鼻の先である、ふらふらと一人で道路歩く子供をあまり見かけなかった、親がたまに顔を出して子供呼びつけた、不審がる近隣住人はかすかな疑問を持っても互いの家を行き来する間柄の一歩手前、そこで線を引いたらば秘密は守られる。

「考え事の前に捜査状況を教えてくれ。読めたして共有は困難だ」

「すみません」、無言を貫く間に車両は路肩に停まる。コスモ不動産をあとに現在は……S駅の約七百m手前、『PL』から一区画(one block)北、路肩の駐車域(parking)。煙草に火がついた、話せという指令に応じた。

やはり車は堪える、要所をありあり中間(なか)の長い一枚画を配する両側、天地は一様に略、経路を畳む。引き出しの遮蔽を待った、排気音が寝息に聞こえた。S川を挟む斜めには山吹色の看板が目に留まり二十四時間営業の駐車場(parking)が見える。一方通行、駐車と横断歩道の信号待ちそれに歩行時間をお金で買った。熊田の判断は合理的だ、しかしながら種田は『PL』の店主に昨日の今日で合わせる顔は持ち合わせていない、百m歩き納得させられる解がひらめいたとして通用する相手はもう通過(すぎ)た。面会はこちらの意向を問わずの門前払いが予測に立つ。熊田ももちろん承知はしてるだろう、私よりも事件に近づける希少な彼独特の論法(logic)を備える。であるとするならば、彼女は計量機(meter)に紙幣を投じる熊田に問いかけた。

「tall building(ビル)の二階から六階を調べるのですか?」

 涼やか、熊田は顔を向けた。早朝の風がそうさせるのかも、いいや、と彼女は判定を覆す。天候に気分を左右される人ではない、憂鬱(melancholy)誘えし気圧は低下よどこへやら、本日は正反対に頭上は青々染まるのだ。私に反して。

「目撃者の勤務先はtall building(ビル)専門の建設会社、その会社が手がけた建物に数ヶ月前だ、日本正は一階に最上階を借りた」

「高山明弘の勤め先SandR(エスアンドアール)はS市の高層型集合住宅(mansion)建設を手がけます。近年では山下組、全国展開のキシタニハウスに押されて一時期、数値は二年前を使用します、成約・着工数は共に当時の三分の一に減少し経営は逼迫から倒産に手が届くも、事業展開を老朽化が進むtall building(ビル)一棟の建替(たてか)えに振ったことで、来年や再来年度は利益が回復する見込み。選べる立場にはなかった、それに同業者の追随は当然念頭にある、つまり古いtall building(ビル)ならどれも建替えを手がけた可能性は高い」しかしだから、それがどうだ、というのが種田の本音。市内に事業拠点を構えるのならばSandRのS支社に勤めし姿なき出張の社員一人残らず容疑をかけなくてはならず所在不明と隠れ家の二点を理由に犯人に相当とは些か、いや強引にもほどがある。これから訪れる先の日本正でさえ、おかしいという類似性をもつ規則が目撃者周辺に漂うのみ、殺害と結合(むすび)つけるにしても、接合部は抜け落ちている。

 熊田は一瞥すると点滅を始めた青信号は横断歩道へ、歩き出した。

 もったいぶらずに教えてほしい、いいや、種田は背中を眺めつつ思う。思考力を試しているだ、私の。背が言う、この程度に四苦八苦とはまだまだ半人前、背が抉(えぐ)る。足りない私は、劣る。そうであってもだ、熊田もまだ確信を控え、それは不確定な要素を抱えるから。訪問先に目星をつけ証拠品、情報なりを収集し補完に至る。

 振出すつま先に目を投遣(やり)た、睨まれない程度歩速を緩め推理に充たう。信号を渡り入り口で待ち構える熊田に続く。tall building(ビル)に入った。自動昇降箱(elevater)は使わず彼女たちは階段を選んだ。