コンテナガレージ

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本心は朧、実態は青緑 7

 午後九時。教会内のステージの撤廃が許可された、鑑識の入念な捜査を受けた機材とそのスタッフたちが三十分という短時間で機材をまとめて退出していった、目の前をがらがら、台車の手を借りてしまえば、あっという間の一往復きっかりに、最前列を狭める数々の黒を基調とした物々しい角ばった機材が排出される。

 アイラは来週に披露するカバー曲の候補を選ぶ数十枚の譜面、その中の一曲を口ずさんだ。

 譜面を捲るついでに、顔を上げたら、聖書を読み上げる台がベンチを分ける通路の真正面に戻されていたのだ、これでやっと帰れるのか、アイラは譜面を閉じて、刑事の姿を探した。スタイリストのアキが後ろの列のベンチで下を向いて端末をいじる、仕事かもしくはプライベートな文字のやり取りだったようで、画面が見えた、内容の詮索は控えた。カワニは、横向きに座る私の前、通路側の席に左膝がリズムを刻みつつ、腕を組んで大きなため息を複数回ついた。もう二人、事務所から派遣されたグッズ販売の二人の社員も拘束されていた、彼女たちは日帰りの予定だったようで、グッズの在庫を確認後、来週の会場先へ送り届ける手配を済ませて東京に帰る予定であったらしい。週末だからといって私の所属する事務所は休みとは限らないのだ。仕事の切れ目が、絶対的な休日であるようで、私のツアーに関わっているのだとすれば、当然ツアーの終わりまで休日はお預け。とはいえ、それはならカワニと帯同した方が、必要経費は安く上がるのではないのか、彼女は考えた。しかし、小さな事務所である。身一つの移動に拍車を欠ける格安航空の利用を見逃すわけもない、狭い機内の座席に押しつぶされる数時間の仮眠と自宅での数時間の分断睡眠を経た、通常業務への移行が事務所の方針、ということだろう。あくまでも、アイラの想像である。

「十時まで教会内の立ち入りを禁じました」不破の声が響く、空気の揺れが体感できた。