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店長はアイス 幸福の克服2-6

「そういう考えもあるでしょう。ただ、ここでは当てはまりません。何故か。大嶋八郎氏は一途に彼女を慕ってたからですよ、ベクトルの向かない行為対象にそれも死を持って後を追うでしょうか。死んだのですから、自殺なら説明がつきますけど、他殺の可能性も残して死んだ。どうしてか。手の込んだ仕掛けです。一人で死ぬ方法は決断次第です。一般的には手首を切るのでしょうが、あれは上手に血管を切らないと出血多量で死ねない。まして、傷口は空気に触れ血液が固まります。死に方としては確実性にかける。ただ、もしかすると、現場を汚したくはなかった、彼女の神聖な場所で死ねるのですから、綺麗な状態が好ましいと思った。そして、彼女と同じ方法を取った。それが最善で最高で最適で最上だと思ったから、そう想像します。ここで、彼の死に方について一応の仮設を立ててみましたが、憶測の域を出ないことは重々承知ですし、明らかになる事実というのは得てして少量と決まっています。とうとうと犯人が死ぬ間際に崖っぷちで殺害の動機とその方法を語ってはくれませんからね」熊田はたっぷり息を吸った。「ですが、犯人あるいは死に至らしめた共犯者は存在すると考えます。一人では、証拠が少なすぎる。大嶋八郎さんが亡くなったときには現場は封鎖されていた。簡単に入れたとはいいがたいですが、現場に頭部を殴打した凶器が見つかっていません。もしも誰かが怖いもの見たさで現場に侵入したとしても、疑いがかかるような凶器を持ち出したりするでしょうか?人が死んでいるのです、逃げ出すのが通常の反応です。では、凶器は現場に凶器はなかったのか。ひとつは、犯人が持ち去った。二つ、もともと凶器は存在しなかった」

「凶器がないなら、どうやって殺したのでしょう?。高い場所から落としてもあのような頭蓋骨の割れ方はしない」種田が合いの手のように指摘する。