コンテナガレージ

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非連続性4-2

 ガソリンスタンドで給油を頼んだ。先に代金を快活さを前面に押し出した、明るさの好印象を刷り込まれた店員に必ず足りる分の一番高額な紙幣を手渡して、スタンド内の自販機でタバコとコーヒーを買った。汚れるのにせっせと磨かれる白の高級車を見つめる男性と目が合う。ラグジュアリーとは聞こえがいい。彼にはどうも馴染まない趣味である。こういった車に乗る人物は、得てして人をよく見つめる。おそらく、恐ろしいのだろう、そう思いはじめてからは、同情しか浮かばない。こちらが視線に対してゆがんだ笑みをぶつければ、相手はぞっとして目線をそらし、複数であれば必ずほかの誰かに私を報告するのだ。

 車検の車両がレーンに乗って車体の裏を見せている。休憩室を出て、ぼんやり裏側を眺めていたら、給油が終わったと、店員から呼びかけられる。会計も済んでいたらしい。まだかまだかと待つ車内よりも有効的な時間を使えたと我ながら評価した部長であった。

 時計の針は程よい頃合の午後に傾いて、部長は再び署に戻り、鑑識を訪問した。

「鑑識の結果を伺いに来ました、タバコと甘いものを持って」

「具体的な銘柄がどちらも印象を分ける」耳が隠れるほどの白髪に、乗せる程度の帽子を頭に鑑識の主任、神が背中で応えた。廊下とさほど温度差を感じない室内にて神が一人、禁煙のはずである鑑識係の部屋でタバコをくゆらせていた。何度も座られたために軋む椅子を回転、神が人の奥底を計るまなざしで部長を迎えた。

「タバコを吸うなっていうのは本人のためではないって知ってました?」神のデスクに差し入れのワンカートンのタバコと酒饅頭をおく。室内中央の長机、椅子を引いて彼は座った。窓側のまっさらなデスクにラップトップが置かれ、ファイルが収まった灰色の棚が壁を埋め尽くす。圧迫感を感じないのは、天井にむき出しにされた配管のおかげだろう。決して洗練を狙った打ちっぱなしのコンクリートを意識した造りではない。

 部長がタバコを取り出すと神のライターが火をつけた。神は無表情で酒饅頭に手をつける。

「お前が動いているのは、熊田たちから聞いたよ。また秘密主義らしいじゃないか」しわがれた声はひどい乾燥の影響とは異なる。

「秘密にしているつもりはありません、黙っているのです」タバコを挟んだ手のひらを返してみたが、効果はないらしい。神の白眼がすぐにそらされ、酒饅頭を捉える。