コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて2-4

 あの母親の選択を想起。

 絞り込まれた選択肢は絶対量が少ないはず、価格の上昇はもともとのサイズを圧迫する胸中。

 しかし、純度は高いか。何物にも変えがたい。だが、押し付けには気を配らなければ。

 対象者が恩恵を受けるのであり、主体は母親にはなりえないのだから。

 布がかかる薄暗い、仄か街灯が差し込む明かりが店内を映し出す。

 低温と高音、湯気の立つ蒸し器、対応に追われる店長。嘆いてる暇は彼とは無縁。

 火を入れたルーに小ぶりな鍋がピザ釜が陣取る出窓のコンロを占領、味を馴染ませる。

 アラーム。蒸し鶏が仕上がる。さいの目に切り、三つ目の鍋で火を入れる。簡易コンロは火の出口が二つしかないため、焼き鳥の方は時間ごとに入れ替えてスペースを譲った。

 十二時前。味を確認、スプーンで違いを見極める。しかし、それほど際立った違いは見られないか。明日のお楽しみ。やるべきことを果たしたら、店長の行動は迅速である。カレーを鍋ごとコンロに放置して、サロンとコックコートを脱いだら、あとはレジ下に丸めた上着を羽織って帰り支度は整う。戸締まり、ガスの元栓を目視、静まり返る冷え冷えとした夜に体を馴染ませて地下鉄の階段を目指した。