コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?7-2

「疲れてる?」

「体力には自信があります、精神的な疲労ですね」国見はやり過ごす車を追うように、一歩前に出て、路地の右を指す。

「大豆の地位って、そんなに低くはないですけど、高いとも言い切れない。それが不満だったのかな」彼女は、マフラーに顔をうずめて話した。

「主食の米と小麦を耕す土地で目一杯、余った土地は期待できないだろう。大規模農家なら複数の穀物の適正な市場動向に応じた生産がある程度は可能だが、小作人は確実に金銭や交換の象徴でもあったお米を躍起になって作ろうとする。当然だよね、だって大豆はしょうゆや味噌の原料にはなるけれど、そこからまたいくつかの工程と時間と手を加え、製造には専用の施設も必要になる。限られた組織、家系が大豆加工の為に畑を耕作。豆として口にするのは、彼らの家族ぐらいだろうね。新規に大豆生産を興しても買い手、供給相手がいなくては、元も子もない」

「制度として確立すれば、つまりその、製造業者が小作人の豆を買い取るシステムが成立していた場合は……」

「食卓に並んでいたかもしれない。生産性が上がれば、複数の選択肢が望める。基盤の産業を確保しつつ、新規の分野に手を伸ばすのは自然の流れ」

「ここです」国見は振り返り、低層の建物に紹介した。

「じゃあ、僕はここで」

「お茶でも飲んでいきませんか?」

「明日の言い訳を増やしたいの?」

「いえ、はい、いや、そうですよね」

「雪も降らないし除雪車も通らないから、そこの黒のセダンも邪魔にならない。あの車は警察だよ」

「ああ、そうですか」ペコリ、国見はそちらに頭を下げる。空き地の溜まる雪を自身の強度、ひしゃげて、外側に膨らむ形で守るフェンスに沿って、車が止まっていた。中の様子は街灯の反射するフロントガラスで見えない。おそらく、運転席と助手席に刑事がそれぞれ乗っているだろう。あの刑事は助手席が似合いそうだ。

 国見が車に見とれている隙に店主は歩き出す。

 背後で声が聞こえたが、店主は角をすばやく曲がった。 

 薄い灰色の空に現の抜かし、整った呼吸で息を大きく吐いた。