コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 2-2

「小川さん、休憩」

「わはっつ」膝が折れて、がぐんと体が片側に沈み込む。「寝てませんよ、瞑想です。こう集中力を高めるのって、ほらお坊さんがやっているじゃないですか、肩をぱちんと、ほら、しゃもじみたいな、これとは違うな、材質は同じ板で叩くでしょう。私は、集中していたんですよ」

「苦しい言い訳」レジで聞いていた国見が一言。

 店主は反省の色が見えようと、そうでなかろうと、特段気にも留めない。僕は彼女ではないのだ。従業員、特に厨房の二人は疲労の色が濃く、動きにも緩慢さが見て取れた。 

 疲れを引きずって、平日の込み具合のディナーが終わった。

 後片付け、明日のランチを頭に入れつつ、発注する商品を選ぶ厨房。

「とうもろこしの生産を海外に頼っているとは、正直私、初耳でした」小川は端末を片手に洗い場のシンクに腰を当てて言う。彼女は専門学校を去年に卒業。卒業するためのかすかな知識を彼女はたまに披露するが、とうもろこしに関しては無知のようである。

「ほとんどが飼料用に輸入される」店主は空中を数えて、ファックス用紙に数字を書き込む。まだ、ファックスという前近代の代物が第一線で活躍、それでも電話で約束を取り付ける手間を省けるのは、店主には有効な指標。

「北海道で生産されているのは?」彼女は夏に食べられる生のとうもろこしを言っている。

「主に食用。飼料用の穀物は形や大きさは許容の範囲が広い。人が食べるのではないから、虫が食べていようとお構いなし。生産分が量そのもの」

「やっぱり店長は物知りですよね。それにひけらかさないし」

「なにを?」

「俺はこれを知ってる、訊いてもいないのにペラペラ話し出すのは本当に勘弁して欲しい」勘弁するのは相手かこちらか?主体があちこちに動いて、話が見えなくなる小川の話し言葉

「報告じゃないかな」

「報告ですか、私に?」小川は人差し指を胸に向ける。

「子供がよく行う動き。どこで何をどうして、どうやったのか。見てきたこと、感じたことなどを教えるだろう、それに似ている」

「私に気があるのかしら?」

「友人という枠組みで仕事の合間のプライベートな時間を割いて合うことそのものは、気の置けない人物と捉えている」

「どうでしょうかね、それは。友達に付き合わされて、いやいや仕方なくって言う場合もあるんですよ」