コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 2-3

「嫌なのに付き合うの?」

「それは、だって、友達ですから。今後の付き合いや私の趣味を押し付ける時にだって相手は丸々同意をしてくれているとは思ってません」

 電話のベルが鳴る。厨房の子機を小川が取る。館山が倉庫の在庫を確かめてピックアップ、足りない食材が書かれた紙をカウンター越しに受け取る。

「はい、もしもし。そうです。はい。店長ですか?はい、少々お待ちください」

「店長、お電話です。ええっつと、種田さんという、……たぶん、女性の方です」語尾に含みを持たせる小川の言い回しに店主は動じない。紙を指に挟んだ手で子機を受け取ると通話ボタンを押した。

「はい」

「営業時間だったでしょうか?」

「いいえ、帰るところです」

「午前に店を飛び出した人物の身元が判明したので、一応お伝えしようと思い、連絡を入れました」

「それはご丁寧に」

「従業員が狙われた事件とは無関係と私は判断します」

「アリバイがあったのですね」

「はい。駐車禁止の取り締まりに言いがかりをつけるトラブルが起こす様子を防犯カメラが捉え、最寄りの警察の確認も取れてます。また襲撃については、カフェの店員によると、彼女の座り位置が壁際のテーブルから数えて二つ目であったことが、発見が遅れた要因ではないかと推察されます。彼女の背後の席にお客が座ってからしばらく時間が経過したのちに、お客から店員へ傷の様子が告げられたとの証言でした。仮に窓際の席にお客が座っていたとしても、あえて見知らぬ他人に声をかけるのを躊躇ったということもあるでしょう。とにかく、店内は密室とは到底言えません、犯人に彼女を襲う時間が限られていたための苦し紛れの犯行であるか、見つからない、あるいは見つかっても構わない、そういった捨て身の覚悟を要していたのか、その点も含めて捜査は続けます」

「管轄が違うのに、お願いをして、ご迷惑だったのでは?」

 声が一段低くなる。「私が捜査を引き受ける可能性を見込んだのはあなたです」