コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

抑え方と取られ方 2-1

 今回は時間の許す限り、つまり午後二時までを制限としたランチを提供した。

 ハンバーガーがとうもろこしパンに常に優勢をみせて、先に売り切れとなった。ただし、とうもろこしパンもその場で一口食べたお客の感想を皮切りに注文数は次第に増えて、ハンバーガーと競ったメニューではもっとも僅差の個数をたたき出した。具材のひき肉と鶏ひき肉は開店一時間に品切れを予測、店主は慌てて餡作りに取り掛かかりるものの、ハンバーガーはブーランルージュのバンズを使用したため、個数に限りが生じてしまったのだ。本来ならば、ハンバーガーが売れ続けたかもしれない、しかし、それはまた実験をしてみなくては、店主は次の課題を見つけた。

 午後に照りつける日差しが雪が解かす。仕込みの際に小川に断りを入れて、店主は煙草を買いに行った。早朝の一本が最後で、帰りのコンビニで買うのは躊躇われたので、地下通路、宝くじ販売所の隣に古くから店を構える小窓に向かって、銘柄を告げた。しわがれた声が返り、もう一度の返答を促す。多少大きめに、ゆっくりと滑舌に気を使う。空のケースを見せるべきだったろうか、しかしもう銘柄の煙草は窓口に差し出された。料金を払い、離れる。いつもは通らない道を選んだ。左と右に、通路に大よその流れが出来上がっている。ただ、完全に守られている様子には見えない。改札の前を通過したら、大画面のビジョンに出会う。昼間の天気を伝える番組。昨日より、平年並み、明日は今日より、昨日と比べた今日が重要らしい。平年も冬の気温を日数で割ったのだから、平年よりはおそらく高くて、低いだろう。だから平均。

 地下通路に入り口が直結したデパートに入った。地上との位置関係を想像する。階段の案内表示で食品売り場の地下二階を目指す。

 街中のスーパーとは対照的な高級感溢れる店内は訪れる人間の性質がかなり雰囲気作りに作用している、店主は悠然と買い物籠に食品をつめる主婦たちをぼんやりと眺めた。店内を回り、穀物類の棚を見つける。あった。おかしいことに、抜けている棚が目立つ。何が置いてあったのか、値札には小麦粉と強力粉、パン粉、もち粉。隣の棚、お米の数量は少なく、値段はかつての三倍をつけていた。

 女性、帽子をかぶったお客が店員に食いかかっているのが遠くに見えた。お米の法外な値段に怒りをぶつけている。棚に視線を戻す。下から二段目のとうもろこしの粉と片栗粉は残っていた。まあ、原料が手に入れば、生成できなくもないし、片栗粉にいたっては、主食に代用を可能にする分量を作り出すには、相当量の時間と労力と手間と粉まみれの服が予測されるのだ。一袋家庭に残っていれば、買い占めるほどの魅力はないということ。

 店に帰還。ランチはノンストップに働き、小川はかなりの疲労を顔に滲ませて、横顔は両目が閉じかかっていた。鶏がらスープの火加減を見つつ、体を休める腰に片手をあてた姿勢で反対には柄の長いしゃもじ。寸胴のふちにしゃもじが乗り、絶妙のバランスで彼女の体を支えていた。