コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが1-3

「日中の暑さは大幅に和らぐ、冷房で冷えた体の反動が出始める頃と推定すると、そうだなあ、温かいスープが理想的だ。ただし、少量に抑える。一度に、急激な変化、環境を舌で味わうにはまだ早い。時に、真夏日のような陽気がまだ後に控えているだろうから」

「店長は気象予報士になったらいいんです。S市中心街の気候だったら、百発百中ですよ」店主の返答に提案を持ちかけたのは、厨房のもう一名の従業員、陽気な小川安佐である。宙に足の裏が浮いた状態が定常、それほど彼女は忙しなく口が動く。

「店を開いてお客に料理を作る理由があって、天気を読むんだろうが」館山が腰に手を当てて、教師、あるいは両親さながらの理論立てた訂正を小川に促す。館山は小川よりもキャリアは上で、年齢は二つ離れている。「その、能天気な早朝の開放感何とかしなさいよ」

 しかし、それぐらいの圧力に屈する小川ではない。店主は一段高い厨房から正面のホールを隔てる板張りの通路に立つ、彼女たちを見つめる。

「いいですよ、だったら向かいのコーヒースタンドでおいしい淹れたてのコーヒーでも買ってきましょうかぁ。私に仕事以外を押し付けて、その間に着々、淡々と店長と今日のランチを考えるんですもんねーえ、先輩は」

「あんたまだ、根に持っているの?」小川は週に二日ほど館山に任せるランチの担当を嫉妬をしているのだ。二人の技量の隔たりはほとんどないレベル、キャリアの分を館山が上回るという具合である。だけど、僕はあまり基本的な技術を身につけた彼女たちへ、より一層の技術向上を求めてはいない。

「後半の発言は、すいません」小川は火種を早急に踏みつける、眉を潜め音圧が下がった館山の言い方を敏感に感じ取った彼女、視線が上下に目まぐるしく動く。「……けど、コーヒースタンドは興味があるのですよ」