コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが4-1

 窓に映る二人の姿が色濃く移り変わる。

 O署の刑事種田は先輩の鈴木と行動を共に、早朝署に出向くやいやな、S市の捜査協力の要請に対し上司の熊田が私たちを指名した。S市に引き返す時間が惜しい、種田は応援要請を受け止めた。鈴木は対照的に卑屈に愚痴を言っていたが、それも車に乗り込み、種田がハンドルを握ると申し出たため、一時間ほどの仮眠が取れると、気分が季節柄の天候思わせる変わりようである。

 女性の種田に運転を任せるというのは男として、云々かんぬん、署を出る前に二人の先輩にあたる恰幅のいい相田が鈴木の行動を嗜めたが、彼女自身、特別男性だから、という理由は今回の運転手をめぐる議論の論点から外れている、と思っていた。それは運転手は彼女であり、鈴木が乗組員だからである。免許は持っていたが、種田はいわゆるペーパードライバーであり、運転に慣れるべく長距離の運転に挑むのは高速域の走行が何よりの近道のはず。だが、そういった理由は相田には伝わっていなかったらしい。しかし、種田は弁解と説明を避け、与えられた仕事の緊急性を盾に、廊下に出て、階段を下り、新品の自家用車に乗り込んだ。鈴木は煙草を咥えて、遅れて後を追ってきた、既に種田はフロントガラス越しに彼の到着を待っているというのに。

 煙に支配される感覚から解き放たれた環境を喫煙者は想像に上げるのだろうか、手を広げて、出発を遅らせる鈴木はくしゃみを豪快に奏でた。早朝の気温は十度前後に推移する、テレビやネットの情報端末の類を種田は一切見ないので、大まかな肌で感じる外気温とラジオから聞こえる不定期の情報とのすり合わせがはじき出した数字であった。

海外の車を種田は選んだ。署内では、背伸びをした、不釣合い、女には贅沢だ、という声が彼女に不必要な声量とクリアな音質で届くものだから、一応その外部のノイズに耳を傾け、考察してみた。鈴木の煙草が吸い終わるいい時間潰し。これは彼女の性格的思考に基づく、一般的な女性刑事の枠は限界を超えている。彼女たちが所属するO署の部署は所謂、規則にそぐわない人種が集められた機関で、たまにやってくる雑務と近頃では頻繁になりつつある管轄外の捜査応援が請け負う仕事である。しかし、それらは特殊で不可解な、明らかに捜査を投げ出した事件が持ち込まれる。体外的に捜査の継続を見せ付けるため、というのが大方の彼女たち所属部署の役割。つまり、最初から期待はされていない。