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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが4-2

 無論、種田も特殊で扱いにくい性質から現在の部署の配属となる。記憶力に優れるが、忌憚のない意見を上司問わずにぶちまけるため、捜査に支障をきたすとの現場からの訴えによって、かろうじて警察の権利をかざす刑事の末端に彼女は籍を置く。

 ハンドルに右手を置く、彼女は考えた。

 まず、背伸びについて。運転の技量や車に関する知識を指すと思われるが、一体どれほどの技量を求めているのか、女性が運転に不慣れ、という傾向についても、男性と比較した女性の免許保有者の割合は低く、つまり男性にも劣った運転技術者が多数隠れているはずだ。また、身の回りに出くわす女性のドライバーの技量がたまたま低かっただけであり、同数による観測を行えば、結果に違いは見られない、そう推察をする。ここまで二分。そろそろだろう。車内に灰皿はない。私のための車、種田は同乗者への気遣いをまったく持ち合わせない、ドライな性格の持ち主である。

 鈴木を乗せて、一時間ほど高速道路を走る。一応、追い越し車線を空けた走行に徹する。鈴木の助言を彼女は聞き入れた。

 現場に着く間際、車内では二人が選ばれたことと数が増える管轄外の捜査協力について、何度かやり取りを行った。話していたのは鈴木のほうである。眠るつもりだったけれど、車内の持ち込んだ缶コーヒーが眠気を取り除いてしまったらしい、女性のような脈絡のない喋りが特徴的な鈴木の声を、一定の走行音をベースに種田は相槌を打った。

 彼の指摘は種田も気になっていた話題だ。特に応援要請の件について、二ヶ月続けてS市が応援を頼んだのだった。これは前代未聞である。一般的に警察署は互いの縄張りに人一倍神経を張り巡らせる、たとえば追いかける犯人が他の署管内で目撃情報が上がったとしても、まずは当該署の了解を取り付け、時にはそこの署員の同行が義務付けられ、非常に面倒な組織形態を依然として維持する。つまり、そういった手続きの煩雑さを踏んででも、応援を頼みたい、というのはよほどの事態である、そう捉えるのが一般的な見方。ただし、前回の列車内の切断死体を振り返ってみて、犯罪の特殊性こそ種田たちが出動は必然であったように思えるが、事件の初期段階から現場に立ち会うことはS市のプライドを鑑みると、どうにも腑に落ちない。

不信感を抱くな、というのはどだい無理な話だ。