コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが5-1

 飛行船の発着場である山中へ種田と鈴木は車を走らせた。ブルー・ウィステリアの店舗周辺の聞き込みはS市から直々に捜索の禁止が念を押して伝えられた。駐車場の待機車両で警戒に従事する捜査員数人に取り囲まれ、あれは脅迫めいた威圧感を伴っていたように思う。鈴木の萎縮が物語っていただろう、種田は四名の顔を取り込み、言葉は受け流した。同じ場所に大勢が居続けるのは人目を引く、そういったニュアンスで代表した声の主はバンに颯爽と乗り込み、見張りに戻って、他三名もそれぞれの持ち場に踵を返した。理に適っているようで不要な外面、見え方に気を遣う、その怪しく整ったスーツという服装を着替えるべきだと、彼女は感じた。これらによって、現場への滞在はお開きとなり、鈴木が調べたネット内の情報を元に昨夜の死亡推定時刻の午後九時前後に起きた停電と検索数のヒットで肩を並べた飛行船の目撃とその船体の写真を頼りに、S市周辺の飛行場をこれまた検索し、行き着いたのが、現在地であるM山、中心街から南西に位置場所。ここはS市中心街を見下ろす夜景の名所としての知名度が高く、ロープウェイが通る。鈴木の端末が示すルートはロープウェイの到着口に向う山道とは別の、なだらかなもう一本の道を選び出し、常夜灯もまばらな緩やかな傾斜を走った。

 赤いさびのように見えたゲート。

 車を降りて捉えると赤茶色の塗装であった。種田は車を中に入れず、ゲート前を行き過ぎた舗装路に止めた。前後の坂道は見通しがよく、それほど邪魔にならないだろう。車を降りる、鈴木が先に降りていた。

 二本の走行ラインを除けば、ここは見渡す限りの平原であった。ここまでの山道を振り返る種田は、標高の低さを体感していた。いわゆる山を越えるぐるぐると遠心力を聞かせる旋回の多いカーブは少なく、緩やかに直線の傾斜を上ってきたという感覚だった。鈴木もあまりこの近辺の土地勘はないらしい、夜景や星を見に山頂を目指す年代ではない、そう車内では話していた。

「しっかし、恐ろしいね。こうもあっさりと世の中の出来事がリークされてる」鈴木は斜め前を歩いて呟く、いつもの彼の喋り方である。「しかもさ、毎日ときてるから、相当暇なんだろうな。まあ、今回はそのおかげで情報を得られたわけだから文句は言えないな」

「その一時の活躍は取り上げられる、そのように願う、あるいは信じる人がほとんどです」

 種田の返答に鈴木が顔を向けた。「たわいもない情報はこれからも突発的な事件とかに関して、価値を与えられる、そう言いたいの?」