「先輩、興奮しすぎですよ」
「なんでもしすぎ、しずぎって、やりすぎりをよくないように言ってるじゃないのよ」
「私に当たらないでください」
「館山さんは、常連客は新しい店に流れてしまう、うち目当ての客さんが移転先で他にお客を取られかねない、そういった指摘だね?」
「なんあだ。それならそうとわかりやすくいってもらわないと、私わかりませんからね」小川が言う。
「だーから、あんたはいつまでたってもっ……、ああ、今はその話じゃなくって、店長!はぐらかさずに答えてもらいます?」ぐっと館山は椅子を引いた。「常連客を移転先に導き、なおかつ他の目新しい店と対抗する妙案なんてものがあって納得したら、私はすぐにでも地下鉄に飛び乗って、明日のために家に帰ります」
「しかしね、移転先には反響が待ってる」
「酷評です」
「そうかもしれない。が、正当な評価かもしれない」
「私たち世代に向けたビルです」
「ビルがお客さんを選ぶの?」
「店長」
「答えて」
「選びはしません。ですけど、入りにくいです」
「二人や家族連れ、会社の同僚や恋人と来るかもしれない」
「ランチは一人。ディナーだって、一人が三分の一です」
「だったら、一人に特化したカウンター席を多めに作ってもらおうか」
「聞いてます?私、反対意見を言っているんですけれど」