コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ3-2

 同僚の真下眞子と会う約束、土曜だから互いに職場を出る時間が合うことは決して、まずもってありえない。けれども、私と話が噛み合う年代は眞子しかもう残されていない。それにだ、稗田は運ばれたと思い込んだテーブル、コーヒーカップを掴もうとした、最近ではよくある、うっかりした思い込み。

 見られていないことを願う。小鳥の囁き思わせるウエイトレスが登場、背の低い女性がコーヒーを置いていった。頭を下げた、そして戻る後姿を見送る。お客にいつも見られている気を張った背中だった。

 砂糖とポットのミルクを稗田は注ぐ、いつもはブラック派の彼女であるが、今日は気分を変えたかった。

 訊いておくべきだろう、同僚として、私にありのままをこれまでは打ち明けてくれた真下だ、今回はかなり悩んだけれど、三順目の振り返りで問いただす決心を固めた。

 二口目を飲み込んだとき、彼女が席についた。いつもの真下、どこか寂しげでどこか興味をひきつける、だけど近寄ってしまうとあからさまに拒否の態度をとられる。掌返し、彼女自身は誘う香りを振りまいてるつもりはまったくないらしい、顔に財産を持った人物だからいえてしまう発言、とは間違っても口にはしない。マイナスにその容姿が人生の足を引っ張る数々の事例は彼女との数十年を職場で過ごした私には、わかりすぎるほどにひしひしと読み取れたんだ。忘れていた、彼女だって平均的に無駄な対処に神経をすり減らすんだった。ごめん、稗田はひっそり羨望と妬みを詫びた。

「土曜に休憩を合わせる」真下眞子が敏感に私の態度を読み取った。「特別な用がある」

 ありがたい、といえば、そうなるか。