コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ7-2

「わざわざお礼のためだけに、来るとは思えない」私は体を起こす、寝袋のチャックを引きあける、体に震えが走った。そうはいっても、彼女を相手に身動きが取れない状態を続けるのはそれこそ命に関わる、私はしゃっきりと危険を想像することで意識を目覚めさせた。

 彼女はテラスの手すりに腰を乗せる。

「二択を迫ってもいいかしら?」顔が見えない。シルエットはくっきり。目をこする。

「二択?」聞き返す。エンジン音が鳴っていたが、鳴り止んだ。最近の車らしい。電装はエンジンとは別の動力機構から力を得て動くのだろう。

「ええ、あなたが嘘を突き通すか、この場で姿をくらますか」

「くらますとは現実から、という意味ですかね?」

「どちらでも状況は同質。だって、誰とも会えないのですから」

「……私を殺す、冗談を。あなたも知っての通り、あの商品の開発は私の発明だ。資金的なバックアップを得られた環境が開発の手助けになったことは認めるにしても、私のアイディアなしに実現にこぎつけることは不可能だった。そもそもの、発案を願い出た幹部連中は経済のマーケットを基に商品化を提示したに過ぎない」私は続ける。「厳密に言えば、そのアイディア自体、数十年もの前に描いた未来の誰しもが創造にあげた世界なので、権利をどうこう言うつもりはないよ。ただ、形に変えた著本人は、私の功績による。誰がなんといおうとだ」

「だから、殺すな、殺されるに値する人間ではなく、価値があって、有能だから。そう、いいたいの?」

「作り終えた人材は無価値、あなたはそう、いいたいのか?」

 沈黙。

「……私たちの組織は一筋縄ではいかない、複雑なの。だから、一人の意見が実行される場合もあれば、それこその中断なんてこともありうる。再浮上した認識の改めによって切り捨てた人材を拾い上げたり、もしかするとその反対に丁重に扱ったクライアントを無残に切り捨てることもよく起きる。私は末端の使者、私そのものも切り捨ての対象に含まれるの。つまりね、なんていったら明瞭かしら、あなたはストレートに物事を捉える癖と、それを捏ねくりまわす二つの思考を持つ、持ててしまえるというのが正しくて、現在は前者の思想が危険と判断された……とにかく非常に状況は切迫をしてるのよ」