「はいっ、誠に申し訳ありません」
「きつい言い方をするから怖がったのね」私は気を取り直す。ウエイトレスのせいで、タイミングを失った……、さあて、どうしたものか。
「言葉面だけを受け取れないのかしら」
「お客というのでワンランク、彼女はあなたを上に見ていた。どうしたって卑屈になってしまう」
「あなたの接客には見られない態度」
「私は、ほら、フランク、フレンドリーがモットーだしね」
「契約とその場をやり過ごすためのね」
「心外。私のことそうやって見てたの?」
「たまに一方的の押し切る場面に出会う、心当たりあるでしょ」
「ぐう、見られてたか」
「何もないよりはまし、興味を示したお客への勧誘は接客に位置づけられる、店舗に足をお客は運ぶんだから、それ相応のサービスや商品説明は許されるべきだ、正統性は高い、反論はだって、成り立つこの経済社会を拒むことになるんだから」
「ブルー・ウィステリアはうちの提携先よね」私は、瞬時に話題を切り替えた。これが最も効率よく相手の意識を無駄なく、誘導できる手段、という稗田の認識であった。
「突然ね」
「状況が状況だけに、その」引いた顎、探る目つきで稗田は質問をぶつけた。「見つかった死体を私は店長だと睨んでるの。大きな声は出さないでね」
「想像力が豊か」真下は鼻を鳴らし一蹴した。「世界的企業のブルー・ウィステリアに恨みを持った人物が、屋上で命を絶った、これは私の小規模な想像」
「新商品の発売日に端末契約に忙殺される店の支店長が、姿をくらますってありえる?」