コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ7-3

 引き出された拳銃、無造作に胸元のジャケットから引き抜かれた。コンパクトな銃身は光を嫌うように反射を抑えたマットな質感だ、照度と同化。軽々、彼女は銃口を向ける。表情は窺えない。

「あなたが手を下すのか、それとも僕が自らで殺めるか、二つ目は想像できないな」

「今すぐ、とはいってません。パフォーマンス、こちらの態度を示したまで」

 笑ったように見えた。うっすらと朝日が昇り始めたのか、背後の空が白みだした。

「……ブルー・ウィステリアの事件に心当たりはある?」彼女は拳銃を構えたまま、きいた。銃身がライトを吸い込み、彼女の右側面に陰影が生まれた。好奇心を押し出した目つきと片側に伸びた口元。

「私は目撃者で、あなたはそれを隣で見ていた」

「私が存在しないと考えて、警察への対応は具体的にどういった説明を披露するつもり?」

「披露って推理みたいに言いますね」

「手品でも言うわ、あとはお披露目もおんなじ意味、隠した技能や技術、能力を表にわからせる、意味合いが強い。だから、本来手品師とはせがまれてマジックを行うほうが適してる。見せつけようとすると、どうしても穿った見方でお客は構えちゃう。また話が逸れたました」彼女は銃身を下げた、私の顔に合わさる照準。これまでははるか頭上数十センチに向けられていた。

「わかってますとも」私はとにかく状況を整理する、それと同時にこの状況、死が寄り添う心境から離れる算段を目まぐるしく頭脳を働かせる、導かなくては。緊張のためか、唾を大量に飲み込んだ。音が彼女にも聞こえただろう。「あなたは飛ばなかったし、現に飛行船は目撃情報こそ寄せられているものの、ネット上の情報は削除の対象に引きあがった。高レベルの防衛機能を働かせた組織なり、政府なり、企業がどこだかはこの際詮索はしません。飛行船の画像と映像、それも発着したの敷地付近のデータが完璧に消去されている、とすれば、飛行船の倉庫や飛行船の機体を調べる捜査は、拒否できます。令状が必要なのでしょう?捜索には」