コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ7-6

 異質であるから、生み出せた世を賑わす開発製品の具現化。大変だとはまったく思わない、日々異なるのだ、些細で微細な変化が私の喜びであり、目標に近づく、今日の研究を全うする短期間の目的。私は、開発に生活を支配させた。それ以外の時間は仕事である、このように考えを柔軟に変化させてからは、仕事が億劫になった。無償の仕事は敬遠されるようになる、中々のアイディアであった。それからは、もう開発一辺倒。パスポートは再発行が必要なほどとは疎遠に、移動はたしかに気分を転換させてはくれたが、思いつたアイディアしかし出先では実際に開発に転化するライムラグが生じてしまう。数時間後、数日後では手遅れだった、書きとめたメモや頭に残る映像や画像は陳腐なまでに鮮明な配色をそぎ落として、鮮度が欠かせない、という結論を頑なに守り抜いて、開発はより私の生活に組み込まれたんだ。

 実は煙草は辞めていた、開発に取り掛かった翌週に非効率な煙と得られる効用、のちの病気のリスク因子などを念頭に、一切手を切った。つまり、約五年ぶりの喫煙習慣。火をつける、火の用心と書かれた赤い穴の空いた箱を引き寄せて、煙を吐く。私は利用されたのかもしれない、気がついても遅いだろう。幾つになったのか、年齢すら発表する場所がこれまでやってこなかったのは、そう、一人では不要な指標である。医者には言ったかもしれないな……。

 弁解に聞こえるかもしれないが、私は以前結婚生活を営んだ三年間の実施経験を持つ。現在の一人身は、私に子供を獲得する機能が劣っていた事実が大部分、いいや生活の破綻そのものを言い表してくれるさ。誰に話しているのか、私は灰を落とす。こうした一人の生き方が開発人生を後押ししたはずだ。旦那や父親の役割から解放され、多少悲観にくれた時期は家族や子供を視界に取り込まない工夫を凝らす。研究者である、改善はお手の物。目に見えなければ、考える機会は減り、外部からの情報も研究以外の会話を排除したので、まったく私は一人でいられた。おもしろいことに私は平常を保ち続けた、真実だ、誰がどこで何をいつ行っていようと、必要性の基準値はほぼゼロという近似値をはじき出した。

 生きながらえようとしていないからだろう、タバコの煙を求める肺。

 ただ生きてる、私はただ死に近づく、道が欲しい、欲が欲しい、目的が、限りある時間に打ち込む研究テーマが降りてきて。

 会社に戻ろうか、何かしら込み入った話が舞い込むかもしれない、外は窮屈だ、ものがありすぎる、溢れ還る、視界が定まらない、私には不向きになってしまったようだ。いや、研究に捧げて給料がもらえた時代から、僕は研究室が最も都合よく肺に空気が取り込めた、大平原や海辺の自然や都会の享楽よりも、ああ、うん、私は乾燥気味で奥まった人気のない、手狭な個室がお似合いらしい。

 半分ほど伸びた煙草を薄い金属の穴に突き通した。生命が燃え尽きるみたいに火種が液面に消えた。